0423 調査研究入門

昨年度は一年かけて、自分の考えをまとめて発表するところまできました。その流れで自然と、今年度は他の人の考えを取り入れようということになりました。

 

まずは冬期講習の国語の授業で読んだのがきっかけで知ることになった内田樹さんの『街場の読書論』と『街場の文体論』を取り上げまることにしました。

 

本題に入る前に『街場の文体論』など内田さんの著書を何冊か出版しているミシマ社の話題になりました。部活の関係でミシマ社に見学に行ったことがあるというのです。私もその出版社の存在は知っていたので、興味深くそのときの話を聞かせてもらいました。

 

話を戻して小説やライトノベルに関係しそうな部分を『街場の読書論』の中から探して読みました。著作権の話、ウェブと出版の関係、有害図書論、純文学の衰退などです。そこに書かれていることを踏まえて自分なりの主張をしてくれた部分があったので、それを忘れないように書いておきます。

 

一つはウェブと出版との関係です。内田さんはウェブで簡単に発信できるようになったけれども、発信をしたい人はウェブ以前でも何らかの手段で発信していたのであり、それほど大きな変化はないと言っています。それに対してこのクラスの受講生は、やはりウェブで多くの人が発信できるようになったことによる変化があると主張しました。確かに出版を取り巻く状況を全般的に見るとそれほど変化がないように見えるけれども、ライトノベルやその周辺では、とても紙の本では出版されないような内容があり、質的な変化が起こっているとの主張です。

 

もう一つは純文学の衰退のあたりで書かれていたことに関してです。内田さんは出版部数の多さよりも長い年月を経て残ることを重視します。そうするとライトノベルは重視されないことになりそうです。しかしライトノベルに分類される個々の書物はそれほど長く残らないとしても、ライトノベルというジャンルや雰囲気全体は長く残るのではないかと問題提起されました。個々の人間は死ぬとしても人類全体としては存続するというのと同じ構造の議論です。

 

次回からは『街場の文体論』を読む予定です。