福西です。
トンケ・ドラフト『王への手紙』(西村由美訳、岩波少年文庫)を読んでいます。この日は、「第3章5 和解」を読み終えました。
【これまでのあらすじ】
ティウリは、騎士エトヴィネムの臨終に立ち合い、「ウナーヴェン(隣国)の王に、極秘の手紙を渡す」という役目を背負います。そのとき、騎士から指輪と馬をもらい受けます。しかしそれを他人に見られたことが原因で、エトヴィネム殺害の容疑をかけられます。
四人の灰色の騎士(リストリディン、ベンドゥー、アルヴァウト、エヴェイン)は、「東西南北からの復讐者たち」を名乗り、エトヴィネムの下手人を追っています。そしてティウリを、ミストリナウト城で捕縛します。
ミストリナウト城主は、客人に果たす義務と、友人リストリディンの要求との間で、葛藤を示しますが、ティウリが無防備のままリンチにかけられることをよしとせず、武具を与えます。その少し前に、城主の娘ラヴィニアもこっそり武器を届けに来ていたのでした。二人の偶然一致した行動に、ティウリは勇気づけられます。
決闘に対し、ティウリは自分の命と手紙のために勇気を示します。そのときの言葉の真実味によって、リストリディンは、ティウリを誤解していたことを認めます。
【今回】
城主の主催で、和解の宴が開かれます。しかし、灰色の騎士の一人ベンドゥーだけは、
「裏切りが無邪気な外見のうしろにひそんでいることもありうるのだ。」(p216)
と、ティウリに対する人物評価を保留します。彼の疑いは、この章の「和解」と、作品全体のテーマでもあります。
ティウリは、騎士たちの言い分から、「もし自分がリストリディンなら、同じように考えただろう」と、自分が疑われたことに納得します。
ベンドゥーは、エトヴィネムの殺害後日に出会った、エヴィラン国の騎士のことを話します。その赤い盾の人物(赤い騎兵たちの「隊長」)が実は犯人なのですが、そのときの尋問では尻尾を出しませんでした。
赤い盾の騎士は、「決闘はしたが、殺してなどいない。むしろ自分はその決闘で敗れて今立ち去るところだ。彼には敵が多かったが、彼の死を聞いて驚いている」と語ります。
「白い盾の騎士は、わたしの敵だった。だが、わたしは、彼に敬意と称賛の念をいだいていた。そのことを、彼の墓に書いたっていい。」
赤い盾の騎士は大変不気味な存在です。続編である『白い盾の少年騎士』でその素性がわかります。
ベンドゥーは、赤い盾の騎士に対するように、ティウリも疑ったわけでした。ベンドゥーの主張は、ティウリに感情移入しすぎるとわかりにくいですが、「盲信(=自分の信じたいように信じること)は危険である」ということです。だれを信じてよく、だれを信じてはいけないのか。ティウリが死んだ騎士に託された手紙も、実はそのことに大きく関係しているのでした。
次回は、『白い盾の騎士の名前』です。
生徒たちが、以下のことを指摘してくれました。
Kai君とEisuke君
・「もしわたしが騎士であるとしたら、騎士の名誉にかけて誓ってもいい。」という表現が、以前、p62、p52、p30、p31にもあった。
(まだ騎士になっていないことが、ティウリのこだわり)
・「まゆをひそめる」という表現が、ベンドゥー(p210)と、城主(p182)とで同じ。
(重責にある人間は、疑うことも仕事)
Aoniちゃん
・ティウリは何度も(か)白い盾の騎士の説明をしている。
(次回、その名前がエトヴィネムだと分かる)
今回の司会はAoniちゃんでした。気付いたこと、共感したことを、場から吸い上げ、ホワイトボードにまとめただけでなく、それをみんなに「書いてください」と言って、一連の流れを作っていました。それがいいと思いました。
確認した語彙
今回分
・褐色 ・確執 ・凛として ・異邦人
前回分
・責務 ・放棄 ・霧雨 ・柄 ・幻影 ・闘争心 ・無法 ・介入
Eisuke君が、語彙をよく調べてきてくれます。