西洋の児童文学を読む(2017/5/25)

福西です。トンケ・ドラフト『王への手紙(上)』(西村由美訳、岩波文庫)を読んでいます。

今回は1章5節「白い盾の黒い騎士」を読みました。 ティウリが手紙を届けるはずだった騎士が死ぬシーンです。1章の山場です。

クラスで確認できた構造

2節の盾持ちの老人とティウリ、5節の白い盾の黒い騎士とティウリの受け答えが似ている。

p52 「騎士の名誉にかけて、それをわたしに誓ってほしい」(白い盾の黒い騎士)
→p30「白い盾の黒い騎士以外に手紙を渡さぬ、と誓ってほしい」(盾持ちの老人)

p52 「ただ、わたしは、まだ騎士ではありませんが」(ティウリ)
→p31「まだ騎士ではありませんが」(ティウリ)

p52 「騎士になるであろう」(白い盾の黒い騎士)
→p27「きっと、まさしくりっぱに騎士になれる」(盾持ちの老人)

クラスで出された「なぞ」

p49 「あなたのところに来ました……すみません……」
なぜ他人の頼みを誠実に引き受け、ここまで全力を尽くしたティウリが、「すみません」と言うのか?

・あまりの出来事に、他に言う言葉が見つからなかったから?
・もっと私が早く来ていたら、宿屋で手紙を渡せていたら、決闘も起らなかったのに……という後悔?
・現場にかけつけたのが、一人前でない(騎士でない)若者だという、自分を卑下する気持ちから?
・騎士の死をどうすることもできない悔しさから?

講師からの補足

p51「わたしは、そなたを信頼する」
→下巻p158 関守の領主の言葉
「そなたは、私を信用する勇気があった。こんどは、わたしがそなたを信用しよう」

p45 怒っていた。
→下巻p267 スルーポルの怒りのシーン

「それは、分別に欠けた、怒りにまかせた、愚かなことばだ」代官がきびしく言った。
「愚かではない」スルーポルが答えた。
「だが、怒りは……。おれは怒っている!」スルーポルは、ふたたび若者たちのほうを向いた。「おれは、任務を果たせなかった。うまくいくはずだった。なぜならおれは……(略)」

p53 「そなたは、ただ、わたしの使者であればよい」
→p58 6節でも同じ言葉が回想シーンで繰り返される。

5節全体 ゴールが遠のく構造
→下巻p247
「これで、任務は終わった。」ピアックがため息をついた。
だが、とティウリは思った。ぼくが持ってきた言づてが何を意味するのか、いまもまだわからない……。

p47 馬は、悲しそうな黒い目で → 後の悲劇的な展開を読者に予想させる書き方
(馬は、6節でもティウリの気持ちを代弁している)