西洋の児童文学を読む(1章のあらすじ)

福西です。トンケ・ドラフト『王への手紙(上)』(西村由美訳、岩波文庫)を読んでいます。
1章の要約例(あらすじ)をまとめておきます。復習と予習にお使いください。

序章 ダホナウト王の騎士たち

ダホナウト王国は強い王と騎士たちによって守られ、秩序があり、安定している。騎士は、王から貸与された土地を治めるか、放浪騎士として方々で任務に就く。騎士になるためには、まず騎士見習いとなり、経験豊富な騎士に盾持ちとして仕えねばならない。その後の一年間、王の兵士として仕え、様々な徳性を身に着けねばならない。最後の試練として、騎士叙任式の前日に二十四時間の祈りを捧げる。その間、飲食、睡眠、会話をしてはならない。ティウリは十六歳である。

第一章 指令  1 礼拝堂で

騎士見習いティウリは、父のような立派な騎士になることを志している。騎士叙任式を翌朝に控えた、最後の試練の夜。ティウリは同期の少年たちと礼拝堂にこもって務めに徹している。礼拝堂のドアを叩く音がする。仲間たちは座ったまま沈黙を守っている。ドアを開けてしまえば騎士になる資格を失うからだ。ティウリは疑心暗鬼になる。しばらくしてまた声がする。「神の御名において、ドアを開けよ!」と。

第一章 指令  3 宿への道中

礼拝堂の裏手に農家があり、ティウリはそこに馬を見つける。老人の言った通りだと思うも、泥棒呼ばわりされる。弁解の暇なく、その馬に乗って逃げ去る。夜の森の中を進む。白い盾の黒い騎士が何者かを考える。その出立ちからダホナウトではなくてウナーヴェンの騎士だろう、また旅人の情報から南のエヴィランから来ただろうと推測する。
途中、正体不明の騎兵たちに遭遇し、ティウリは隠れてやり過ごす。用心して獣道を選び、白い盾の黒い騎士のいる宿へ向かう。礼拝堂に戻る時間に間に合わないことを気にし、腹を立てる。夜明け前、やっとのことで宿を見つける。

第一章 指令  4 宿、イカルヴァラ

ティウリは宿の主人を起こす。主人は怒るが、ティウリの切羽詰まった声から事の重大さを察し、ドアを開ける。主人は「白い盾の黒い騎士はここにはいない」と告げる。ティウリは「騎士のところに来たのか、騎士から遣わされたのか」と問われ、前者だと答える。手紙のことを伏せたまま、騎士の行き先を尋ねる。昨日の朝にその騎士が来て、顔を隠したまま泊っていたこと、夜中に一人の赤い盾の黒い騎士が来て、例の騎士に決闘を申し込んだこと、二人が宿を出て行った方角などを聞き出す。ティウリは宿の主人に「ありがとう!」と言い、決闘の現場に急ぐ。

第一章 指令  5 白い盾の黒い騎士

朝。ティウリは白い盾の黒い騎士の足跡を追って、決闘場所へと急ぐ。宿で手紙を渡して引き返せると思っていたのにそうはならず、叙任式の時間が刻一刻と迫り、腹を立てる。瀕死の白い盾の黒い騎士を発見する。騎士の口から、決闘ではなく罠だったことが明かされる。騎士は、合言葉を知るティウリが盾持ちの見つけてきた使者であることを認める。ティウリは、騎士の使者となって、ウナーヴェン国王まで手紙を届けることを誓う。騎士は「そなたを信頼する」と言って指輪を渡すが、復讐については「そなたの仕事ではない」と言う。騎士の死に、ティウリは深い悲しみにおそわれる。

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第一章 指令  6 赤い騎兵たち 

ティウリは宿イカルヴァラに引き返す途中、白い盾の黒い騎士の殺害者である、赤い騎兵たちと遭遇する。無関係を装って立ち去ろうとするが追跡される。馬をおとりにして何とか追手をまき、手紙を再び胸にしまう。極度の緊張と弛緩。しばしの回想。平和な森の中で、自分だけが別世界にいるような疎外感を味わう。叙任式の刻限となり、礼拝堂の夜のことが遠い昔のことのように思い出される。ティウリは、白い盾の黒い騎士の最期の言葉を思い起こす。そこへ馬が戻って来て、元気を出す。そして馬を返さなければならないことに気付く。

第一章 指令  7 逃亡

ティウリは宿に着き、宿の主人に白い盾の黒い騎士の死を知らせ、埋葬の手配を頼む。ティウリのはめている指輪に疑いのまなざしが向けられる。そこへ、ティウリの借りた馬の持ち主が怒って現れ、代官に突き出すとどなる。ティウリは赤い騎兵たちのことを話すが、説明は難しく、すきを見て逃げ出す。どろぼうだと疑われ、家族にも心配されるだろうと嘆息しつつ、約束を果たすことに集中しようと自ら言い聞かせる。町への使いを頼めなくなったが、騎士の馬を使うことを思いつく。

(配布したプリントを少し手直ししました)