福西です。今日の論理パズルは、「AorB」の否定が「AでないandBでない」であることの練習でした。今回はみんな簡単だったようです。しかしそう言えるのも、レベルアップしたからでしょう。
『魔女キルケ』
トロイアの勇士ヘクトル、アイネイアス、デイポブス、パリスの四人が、魔女キルケに魔法で、豚、牛、羊、山羊に(重複なしに)姿を変えられてしまいました。しかもその魔法は、姿だけでなく、言葉までも変えてしまうという恐ろしいものでした。そのため、誰一人真実を告げられず反対のことを言ってしまいます。そして、以下のように告げています。
豚「我こそは、ヘクトルかアイネイアスなり!」
牛「我こそは、アイネイアスかデイポブスなり!」
羊「我こそは、デイポブスかパリスなり!」
山羊「我こそは、パリスかヘクトルなり!」
そこでキルケは、油断してある真実をもらしてしまいました。
「どうせ分かるまいから、本当のことを言ってあげよう。豚はパリスではないよ」
さて、誰が何の姿に変えられてしまったでしょうか? ただしキルケの発言も条件の中に入れて考えてください。
<ア>=アイネイアス 「う」=牛
<デ>=デイポブス 「ひ」=羊
<パ>=パリス 「や」=山羊
( )の中は私の補足です。それ以外は原文どおりです。
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T君の答案
全員うそをついているから、「ぶ」は<デ>か<パ>になる。そして「う」は<へ>か<パ>になり、「ひ」は<へ>か<ア>になり、「や」は<デ>か<ア>になる。
まず「ぶ」は、<パ>ではない(キルケの条件)ので、<デ>になる。
そして「う」は、<パ>となる。なぜかというと、羊と山羊には<パ>がはいっていないから(<パ>は羊と山羊になる可能性がなく、豚も<デ>に決まったから)、<パ>は牛になる。
そして羊は<へ>か<ア>になる。でも山羊が<デ>はもうないので(<デ>は豚に決まっているので)、<ア>になる。
すると羊は<へ>か<ア>だったけど、<ア>は山羊は(に)もうけっていしているから、<へ>になる。
「ぶ」⇒<デ>
「牛」⇒<パ>
「羊」⇒<へ>
「山羊」⇒<ア>
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U君の答案
全員ウソをついているので豚は<デ>か<パ>。牛は<へ>か<パ>、羊は<へ><ア>。山羊は<ア>か<デ>になります。
豚は<パ>ではないので、豚は<デ>。
もし牛は<へ>だと羊は<ア>。だけど(その時には)山羊は<パ>じゃないといけないけど、<ア>が(今)<デ>なので、牛は<へ>ではない。つまり<パ>である。
もし羊は<ア>だと山羊は<デ>。でも<デ>はもう一回出ているので、羊は<へ>。なので山羊は<ア>。
つまり
豚=<デ> 牛=<パ> 羊=<へ> 山羊=<ア>
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N君の答案
まず、この問題を解くかぎは、2人ずつ1人の人ではないということを指している。(豚と牛は自分が<ア>でないことを、牛と羊は<デ>でないことを、羊と山羊は<パ>でないことを、山羊と豚は<へ>でないことを、一巡しながら指している。)
そこで、<パ>は豚ではないという条件付きで、豚は<へ>でも<ア>でも<パ>でもないから、<デ>となる。
次に、やぎは、<パ>でも<へ>でも、(<デ>はさっき決定したから)<デ>でもないから、<ア>となる。
さらに、ひつじは、<デ>でも<パ>でも、(<ア>はさっき決まったから)<ア>でもないから、<へ>となる。
最後に、残った者は牛で、当てはまるのは<パ>だけとなる(これは矛盾しない)。
A. 豚は<デ>、牛は<パ>、羊は<へ>、山羊は<ア>。
*このN君だけは、他の二人が豚→牛と解いているのと違って、豚→山羊の順番で解いています。
今回の所要時間は30分ぐらいでした。こうして解答が一同にそろってみると、みんなすごいなあと思います。
答案の引用タイプ、お疲れ様です。デジカメで写真を撮るのは一瞬ですが、生徒たちの思考の足取りを記録するには、こうして一文、一文タイプするほかありません。願わくは、生徒たちが将来、このエントリーを読みますように。
これらの答えを読みますと、正解は一つなのですが、それを論証する文章は、一人一人違っていて、この点に興味を覚えます。正解を選択してマークで塗りつぶす問題も簡単にできるでしょう。
しかし、今生徒たちは、単に正解を出すだけでなく、自分が正解にたどり着いた思考の足取りをわかりやすく表現しようと思って苦心しています。広い意味で言語表現の非情に有効な訓練になっています。
この努力は貴重であり、きっと将来大きな花を咲かすための大切な栄養になることでしょう。