福西です。
先週は、メーテルリンクの『青い鳥』を、絵本と原文を使って紹介しました。原文の方は、全部を読むのは無理なので、クリスマスの時期を舞台にした最初の場面と、クライマックスの「未来の王国」という場面を朗読しました。
その後で、印象を作文にしてもらいました。
物語の主人公は「青」という名前の五歳の女の子です。青は「青鳥ようちえん」に通っていて、いろいろな経験をしますが、その頃に青の最愛のおばあちゃんが亡くなるという経験をします。そのおばあちゃんが青にこう言います。「見えなくても、これからはいつまでもお前のそばにいるからね」と。青は、きっと自分のまわりにはおばあちゃんがいるのだと信じ、それを幸せだと感じます。その後の青は、あたかもおばあちゃんの加護を受けた人生を歩み、大人になったら幼稚園の先生になろうと心に決めます。そして『青い鳥』の未来の王国に出てくる「青い人たち」のように、未来の子どもたちの世話をすること、それが自分にとっての「今はまだ見えない幸せ」なのだと思うようになる、というストーリです。
今は書き出したところですが、大変良い筋だと思います。続きが楽しみです。
一方で、Jちゃんは「未来の王国」が印象深かったらしく、こんな面白いことを言っていました。
「赤ちゃんがもし未来の王国から、お母さんのおなかの中に来たのだとしたら、赤ちゃんはきっと未来の王国のことをおぼえていて、それを一生懸命お母さんに『こんなことがあったよ』と話そうとしていて、それがあの『アーアー』という言葉なの。でも通じないから、私たちにはそれが何を言っているのかわからないだけなの。それで赤ちゃんが1歳ぐらいになって、言葉をやっと話せるようになったときには、もう時間がたちすぎていて、未来の王国のことは忘れてしまうの」と。
切ない話ではあるのですが、話しているときのJちゃんがとてもニコニコとしていたのが印象的でした。ふと『風に乗ってきたメアリー・ポピンズ』の中の、双子の赤ん坊の話を連想しました。そしてJちゃんが一人でそのように考えついたことに驚きました。
作文のほうでは、最初の場面の貧乏人と金持ちの対比について、「シアワセハココロニヨッテチガウ」(人それぞれである)ことを、未来の国の人が話す言葉で書いてくれていました。
二人とも、素直で、凛々しい心の持ち主だなと改めてそう感じました。
一つの授業時間の中にこれだけ密度の濃いやりとりが交わされていると知り、驚きです。生徒の純真な心とそれを素直に形にする姿勢がすばらしいと思いました。Jちゃんのお話から、私はプラトンの「想記説」を思い出しました。短くとも感動的です。