高木です。
ガリバーとフウイヌムの主人との対話は
徐々に核心部分に近づきつつあります。
当時のイギリスとフウイヌム国とが、人間と馬との関係が逆転している、
いわば鏡像関係にあることは、以前読んだ通りですが、
戦争をしてお互いを傷つけ合うイギリスのヤフー(=人間)の話を
ガリバーから聞くに至って、フウイヌムの主人は次のように言い放ちます。
「もし理性の所有者だと称している者がこれほどの残虐行為を犯しうるとすれば、
その理性の力は完全に腐敗堕落しきっていて、
単なる獣性よりもさらに恐るべきものとなっているのではないか、
と疑わざるをえない。」(引用は岩波文庫版より)
そこでは鉄砲を作りうる技術が、獣性に拍車をかけているのです。
そういったことはむしろフウイヌム国のヤフーにおいても日常茶飯であることを話します。
ヤフーの集団では、食料をひとまとまり与えれば必ずそれをすべて独占しようとする者たちによって争いがおこる。
またヤフーは、何の役にも立たない「輝く石」を一日中かかって掘り起こしては、
仲間に見つからないように隠しておく奇妙な風習をもつ。
こうした行為は、理性を持ったフウイヌムたちにとっては理解しがたいのですが、
それではなぜ、理性を持つと自称する人間たちさえもが、同様のことをするのでしょうか。
真実の鏡に映し出すようにして人間社会への批判が行われていくこうしたくだりは、
非常に明快で力強く、迫力があります。
H君とM君もそれに引きつけられるようにして熱心に朗読してくれました。
M君は、「ヤフーは人間が進化したものかもしれん」と言います。
人間の悪徳がこのまま進んだ結果、人間は限りなく獣に近づくのです。
「人間はサルから進化したけど、このままやと、またサルに戻っていく」とM君。
これについてはH君も同感らしく、
「ヤフーは泳げるって書いてあったけど、サルは泳がれへんし、
やっぱり(ヤフーは)人間が進化したものやと思う」と言います。
彼らは、スウィフトの風刺を正確に理解しています。
しかしその上で、M君が言った言葉が、非常に印象に残っています。
「それでもヤフーの母親は、子どもを守る。」
どれだけお互いが争い合っても、最終的には血のつながりが理性を保たせる。
M君の考えは、このあと開陳されるフウイヌムの美徳を先取りするような、肯定的なものだと思います。
今日もいつものように、朗読のあとは筆写をして、
後半は創作を進めました。
>「それでもヤフーの母親は、子どもを守る。」
この言葉を書き留めてくださったことに感謝します。