福西です。 『二分間の冒険』(岡田淳、偕成社)を読んでいます。この日は14章『見えていなかったもの』を読み終えました。
生徒たちの音読がいい感じです。まるで小さな劇をしているように、次第に感情移入が多くなりました。私も一緒に読んでいて、気持ちが高まります。
「あなたって、きっと竜をたおすためにここにやってきたのよ。こんどは、あなたの世界の竜をたおすためにもどるんだわ。」
「ぼくはそんなにかっこいいやつじゃないよ。」(p224)
このくだりに対して、第1章の以下のセリフが思い出されました。
「むかしの西洋のさ、騎士の出てくる物語かなんかだといいんだけどな。ほら、竜を退治したりするやつ。」
「おまえねえ、学校がそんな映画を見せてくれるわけないじゃないの。」(p9)
「そう、あったあった」と。これは物語の枠組みです。とげぬきを拾い、猫のダレカと出会ったのは、このあとの出来事でした。
さて、猫のダレカは「悟にとって確かなもの」に姿を変えていました。悟はそれをとうとう見つけました。
それは、悟本人でした。悟はこの世界や、竜を倒した仲間たち、かおりを確かなものだと最初思いましたが、違いました。そして頼りない自分が確かなものだということに戸惑います。
かおりの心も、悟の心も大きく揺れ動く箇所です。
そこで、ダレカの声がします。ダレカはもう元の世界へ帰る時間だと悟をせかします。悟は意を決します。すると間際に、一段、深いことに気づきます。
「なぜかというと、ぼくがそう思ったからなんだ。ぼくがいちばんたしかなものなら、そのぼくがたしかだって思ったもの、みんなも、そしてきみも、ぼくにとって、きっとたしかなものなんだ。」
このくだりは、ご存知の方も多いと思いますが、デカルトの『方法序説』と同じ、分解と再構成の手続きです。
この世界のかおりは、悟から「とげぬき」をもらいます。悟は自らの意思で、自分の肩を抱きながら、さけびます。
「ダレカ、つかまえた!」
──あたり!
来週はいよいよ最終章です。さて、とげぬきは、元の世界のかおりは、どうなっているのでしょうか。
【追伸】
次に読む本を決めました。生徒たちに候補の作品から選んでもらった結果、秋学期の残りは『シュナの旅』(宮崎駿)を、冬学期からは『大どろぼうホッツェンプロッツ』(プロイスラー)を読むことになりました。また楽しみです。