福西です。
紙芝居『なめとこ山のくま』(宮沢賢治/原作、諸橋精光/画・脚本、童心社)を読みました。
原作が凝縮された、読み応えのある作品でした。絵も、話の筋も心に残りました。
熊捕り名人の小十郎は、熊との関係性を大切にしています。殺した熊を背負って下山する時、小十郎の背中が曲がりますが、その様子が熊に哀悼を捧げるかのようでした。
「熊。おれはおまえを憎くて殺したのではない。次は熊なんぞに生まれてくるなよ」
と、小十郎は半ば自分に言い聞かせます。
張り詰める思いで殺した熊を、いつも商人に買いたたかれる小十郎の生活は、みじめなものでした。
ある時、小十郎に狙いをつけられた熊が言います。
「おまえは何がほしくておれを殺すんだ」
と。小十郎は、
「皮と肝のためで、他のものはいらない」
と答えます。すると熊は、「もう二年待ってくれ。二年目にはおまえの家の前で死んでいてやるから」と言うので、小十郎は聞き入れます。そしてその通りになりました。
小十郎は老います。
それから、その時が来たのでした。
鉄砲で仕留めきれず、熊によって彼は命を落とします。
すると、熊から声が聞こえたのでした。
「小十郎。おれはおまえを殺すつもりはなかった」
と。
ここで、受講生たちは「同じや」と気づきました。前半、小十郎が言っていたことと。
「熊。おれはおまえを憎くて殺したのではない。次は熊なんぞに生まれてくるなよ」
死にゆく小十郎の頭に、一面ちらちらと、青い星のような光が見えます。
もし小十郎の耳がまだ聞こえたなら、熊が「次は人間なんぞに生まれてくるなよ」と言ったのかどうか──それは、何とも分かりません。
『黒ねこサンゴロウ5 霧の灯台』(竹下文子、偕成社)は、第2章を読みました。
俳句は、「流れ行く大根の葉の早さかな 虚子」をしました。