福西です。6月22日の記録です。この日、3年生には、『原論』の命題3.12と3.25を証明してもらいました。
命題3.12は、原型では「もし二つの円が外側で互いに接するならば、それらの中心を結ぶ線分は接点を通るであろう」なのですが、次のように言い直してから、考えてもらいました。
(命題3.12改)
「ある円が与えられたとき、その円周上の任意の点における接線を作図せよ」
また命題3.25は、
「円の切片が与えられたとき、その切片を含む完全な円を描くこと」
とあります。要するに、途中まで描かれた円の切れ端があって、それを完全に復元するにはどうすればよいか? というのが今回の問題です。
3年生のA君は、「3.12は簡単そうに見えて難しそうなので、3.25から証明します」とのことでした。
ヒントとして、「円を定めるために必要な情報は二つだけであり、それは何か?」と示唆したのですが、A君はそのことをすでによく理解していました。すなわち、「円は、中心点と半径とが与えられれば描ける」ということです。(なぜなら中心点から等しい距離の点の集合が円だから)。そこで、復元すべき円の中心点をまず定めることを考えました。
その時に役に立ったのが、垂直二等分線の作図方法でした。ちなみにA君はそれを1年生の時に、命題1.10、1.12のあたりで二等辺三角形の性質としてすでに証明しています。ですので今回それを使って良いというわけです。
(以下は記憶をもとに書いたので、オリジナルと若干の誤差があるかもしれませんが、ご了承ください)
命題3.25 A君の作図方法
1)与えられた円の弧(切片)の両端にある二点をA、Bとし、弦ABに垂直二等分線Lを引く。直線Lと弦ABとの交点をC、直線Lと弧ABとの交点をDとする。
2)新たな弦DBについても垂直二等分線Mを引く。
3)直線L、Mの交点をOとする。
4)点Oは、作図すべき円の中心であり、また線分OA(=OB=OD)は作図すべき円の半径である。
5)点Oを中心に、OAを半径に取って円を描く。これは与えられた円の弧とも完全に一致する。これが作図すべきものであった。
点Oが作図すべき円の中心であることの証明
1)直線Lが弧ABの垂直二等分線であることから、三角形OABは二等辺三角形。すなわちOA=OB。
2)直線Mが弧DBの垂直二等分線であることから、三角形ODBは二等辺三角形。すなわちOB=OD。
3)OA=OB、OB=ODより、OA=OD。すなわち点Oは、弧AB上の3点から等しい距離にあるので、弧ABを持つ円の中心である。
幾何の証明ではいつものことですが、3)にあるような三段論法がとりわけ美しいと思います。
これで命題3.25の作図方法は証明されました。
一方3.12ですが、この時のA君にはもうすでに分かっていて、「垂直二等分線を使ったら、同じようにできる」とのことでした。さっそくA君は円を描いていました。
命題3.12 A君の作図方法
1)与えられた円の中心をOとし、点Oを通る直線Lを引く。また直線Lと円との交点をAとする。
2)直線L上に、点Aから半径OAと等しい距離に(点Oの反対側に)点O’を取る。
3)線分OO’の垂直二等分線Mを引く。これが作図すべきものであった。
(直線Mが線分OAに対し垂直であることから、円の接線であることは明らか)
はい。それでよいです。