福西です。遅くなりましたが、その1の続きです。
A君は、命題18を証明しました。
すべての三角形において大きい角には大きい辺が対する。
角が大きければ、向かい合っている辺もまた長い、という主張です。A君は、これの「三平方の定理を使った証明を試みてみたい」ということでした。
というのも、アイデアとして、もし今考えている三角形が図1のような直角三角形だとすれば、三平方の定理より、c^2=a^2+b^2で、cが一番長い辺であることが言えます。また直角三角形では、∠Cの90°が一番大きい角です。そしてそれは辺cと向かい合っています。よって、題意が満たされます。そこに注目して解いてみたいということでした。
(図1)
<図1でのA君の証明>
三角形の総和(内角の和)は180°な為、直角三角形の直角は必ずその三角形の最大の角度である。(*)
もし任意の三角形においてより大きい辺に対する角の方がより小さいとするならば、ピタゴラスの定理c^2=a^2+b^2を使うなら(*)、
最も長い辺であるcに対する角の角度は90°なので、より大きい辺に対する角の方がより小さいという前提に反する。
よって背理法により任意の三角形において、より大きい辺に対する角の方がより大きいというのが証明できる。
(*)ただし、命題1-32(三角形の内角の和が180°であること)と、1-47(ピタゴラスの定理)を、あとで証明するという前提です。
そして次に、一般の三角形でも、直角三角形を2つに分割して考えれば、同じようにして考えられるのではないか?というのがA君のアイデアでした。
(図2)
(上図で抜けていますが、AD=dとします。また角はA>C>Bとして、辺a>c>bを示します)
図1の結果から、使える条件は、
1)三角形ABDにおいて、c>a’、またc>d
2)三角形ACDにおいて、b>a”、またb>d
です。
しかしこれを使って正面突破を図ろうとしても、自明の結論しか出てこずに、目的のa>b、またa>cを示すには、まだ何かが足りないことになります。
そこでA君は、図1の時と同じように、背理法を使うことにしました。
<図2でのA君の証明>
全ての三角形は2つの直角三角形で作られる。直角三角形の最長の辺は斜辺、それに対する角は90°である。
もし、任意の三角形において、より大きい辺に対する角の方がより小さいとするならば、
90°の角<他の角となり、このことが2つの直角三角形において言えるから、180°<三角形の角度(内角の和)となり、三角形の角度は180°であることに反する(*)。
よって背理法により任意の三角形において、より大きい辺に対する角の方がより大きいと言える。
(*の補足説明)
三角形ABDにおいて、最長の辺はAB。それに対する角度は90°。もし命題が成り立たないと仮定すれば、辺ABよりも短い辺ADないし辺BDに対する∠BADか∠ABDが90°よりも大きいことになる。また三角形ACDにおいても同様に、∠CADか∠ACDが90°よりも大きいことになる。よって、三角形ABCにおいて、内角の和=∠ABD+∠BAD+∠CAD+∠ACD>90°+90°となるので、矛盾する。
背理法が使えていることが、やはりポイントとなっています。
次回は非常に重要な三角不等式(命題20)に取りかかります。
大人も参加したくなりますね。語学その他もそうですが、卒業した後で同じ事をやり直すとなると、何もかもが新鮮に思えます。