0515 調査研究入門

テーマに関しての知識が蓄えられてきておもしろくなってきました。

 

ロマンス→ノベル(小説)→ライトノベルという大きな図式のもとに、いろいろな小説を分類しようという方針を前回までに立てました。

 

今回は一柳廣孝 、久米依子『ライトノベル研究序説』(青弓社、2009)の内容を吟味しました。この本はいろいろな著者の論集になっていて、発想を得るのに適しています。

 

この本のおかげでライトノベルの源流をはっきりとたどることができて、ライトノベルの位置を見定めることができました。横軸に対象年齢の高低をとり、縦軸に虚構度の高さをとると、ライトノベルは左上に位置します。左下は児童文学、右上はSFやミステリーで、これらはライトノベルの源流です。右下は差し当たり政治小説や経済小説だと考えます。ライトノベルよりのSF・ミステリーの位置に赤川次郎、SF・ミステリーよりのライトノベルに谷川流、ライトノベルよりの児童文学に宗田理、といったように具体的な作家の名前もこの図式に書き込むことができました。

 

この図式はなかなかに満足のいくものでしたが、ライトノベルのもう一つの源流であるTRPGやファンタジーを位置づけることができませんでした。この点については次回以降に検討したいです。

 

その他の論点としては、メディアミックスなどの売り手側の事情、あとがきなどから考えられる作家の立ち位置、読者の捉え方、性別による違い、民俗学的な(あるいは物語構造論的な)考察などがありました。

 

今回はもう一冊の文献を参考にしました。野口武彦『小説 (一語の辞典)』(三省堂、1995)です。こちらは明治期に「小説」という翻訳語が登場するあたりから戦後までの日本の状況についての本です。

 

この本によると、坪内逍遥は現実をありのままに模写するものとしてのノベルに小説という語をあて、『南総里見八犬伝』に代表されるような現実からかけ離れたロマンス的な要素を退けます。現実をありのままに模写するといってもいわば神の視点のように超越した場所から描写することもあれば、作者が主人公に入り込んで描写することもあります(私小説)。

 

この議論を踏まえるとライトノベルはロマンス的な要素が強いと言えそうですし、とりわけ作者=主人公という私小説からは遠いものであると思われます。