前回に読んだ百科事典での「小説」という項目のおさらいから始めました。中世ヨーロッパで騎士道物語に代表されるロマンスと呼ばれる作品が登場し、次いで様々な事柄を題材にしたノベルが登場しました。そして印刷術が開発され、近代になり、自然主義的な作品が目立つようになりました。日本ではそうしたノベルを輸入して「小説」と翻訳したわけですが、日本は明治になって一挙に近代化をしたので混乱が見られました。日本は明治になって上からの近代化を短期間で推し進めたという事情は、小説に限らずよく引き合いにだされます。こうした複雑な事情を飲み込んでもらえたのはよかったです。
今回はWikipediaの小説の項目を参照しつつ、当初の目標であった小説の分類を試みました。長さによって長編小説や短編小説と分類できるのはいいとして、その後に列挙されている○○小説という並びは雑然としています。これらを整理する軸を考えました。
一つの軸は舞台となる時代です。歴史小説や時代小説、ファンタジー小説は過去や未来の時代を扱うと考えることができます。次は読者の対象年齢による分類です。児童文学、学園小説、青春小説、政治小説・経済小説はおよそこの順で対象年齢が上がると位置づけることができます。純文学と大衆文学も読者の対象の違いと言えます。推理小説やSFは科学性があるかどうか、恋愛小説は恋愛性があるかどうか、としか言えなさそうです。これらは複合することもできます。
残ったもののなかで大きな分類は私小説とライトノベルです。これらは小説の分類というよりは、百科事典で確認したような小説の歴史的経緯に関わります。私小説は明治期に小説という語が用いられるようになってからしばらくの間盛んになった、作者の視点を作品中に大きく反映させる小説です。これは現在ではあまり盛んでないようです。対してライトノベルはこのところ隆盛を極めているものです。しかしその定義を聞かれると答えに窮します。一つの大きな特徴はイラストが付されていることで、これはマンガを取り込んだと言えます。参照した百科辞典の記述では、小説というものは先行する時代の作品を批評したりパロディしたりすることによってジャンルを超えていることを繰り返してきました。ということはライトノベルは新しい小説と言えそうです。ロマンス→ノベル→ライトノベルという図式です。
ライトノベルにはもう一つおもしろい特徴があります。それは作者がたくさんいること、言い換えると、作者と読者の距離が近いことです。そしてそれぞれの作者が独特な個別性を持つというよりも、レーベルによって世界観や雰囲気が棲み分けされているといった状況のようです。パソコンやインターネットの技術がこの傾向の背後にあることが推測できます。
小説がマンガを取り込んでライトノベルになったと書きましたが、動画(アニメ)を取り込むことは難しいとこのクラスの受講生は指摘しました。なぜなら動画に合うのは文字ではなく声だからだということです。説得力がありますね。先述のWikipediaでは動画と融合する方向が示されていましたが、現時点ではそちらの方向には進んでいないように見えます。書き言葉と話し言葉の違いという古典的なテーマに行き着きました。
今後の予定としては、ここまで考えてきたことをまとめ、特定の分野の小説について調べたり代表作を読んだりしつつ、新たな小説の展開としてのライトノベルについて論じることを考えています。