0628 英語講読カズオ・イシグロ『日の名残り』

ミスケントンと主人公の父親との関係が回想されます。

 

当初こそミスケントンが父親を見習うべきだということになりますが、次第に父親の加齢によるミスが目立ってきます。そして彼女はそのことを指摘します。

 

Then, not more than a week later, I was coming down the back corridor from the kitchen when Miss Kenton came out of her parlour and uttered statement she had clearly been rehearsing; this was something to the effect that although she felt most uncomfortable drawing my attention to errors made by my staff, she and I had to work as team, and she hoped I would not feel inhibited to do similarly should I notice errors made by female staff.

 

そして、一週間もしないうちに、私が台所から裏側の廊下を来ているときに、ミスケントンが休憩室から出てきて、明らかに繰り返し練習していた発言をつぶやいた。次のような趣旨のものであった。私のスタッフによってなされた誤りに私の注意を向けるのは非常に居心地の悪いことであるが、チームとして働かなければならず、万一私が女性スタッフによってなされた誤りに気づいたなら同じようにすることを遠慮しないでほしいと。

 

こうした慇懃な表現が見所です。

 

父親のミスはちりとりを出しっぱなしにしていたり、Chinamanを置き違えたりしたことでした。文脈からしてChinamanは人形のことだろうと推測できましたが、具体的にどのようなものか想像できませんでした。Chinaman – Wikipedia, the free encyclopediaの下のほうからリンクをたどって、A Rare and Unusually Large Early 19th Century Nodding Figure of a Chinaman Attributed to Giovanni Domenico Gianelli for sale on MasterArt.comを見るとイメージがわきました。

 

 

父親の転倒事故もあり、ダーリントン卿も父親の仕事を減らすように言います。百科事典を見ながら主人公に話すほどシャイで控え目な人だと描写されます。

 

話の筋や登場人物の性格などがつかめてきたので、かなり読みやすく感じるようになりました。