5/7 ことば4〜6年生

高木です。

遅くなりましたが、5/7の「ことば」の記録です。
その日も、授業の初めに、前回好評だった言葉遊びをしました。
これは、思いがけない言葉同士を突き合わせることでイメージを膨らませる、
物語発想のトレーニングです。
(この取り組みについて、詳しくは前回(4/23)の記事をご覧下さい。)

ただし、前回の記事にも書きましたが、
今回は、選んだ2つの言葉の「つなぎかた」も工夫してもらいました。
たとえば、「エルモ」と「宇宙」なら、
エルモ「が旅行した」宇宙 以外にも、
エルモ「の中の」宇宙、エルモ「のような」宇宙 など、
言葉同士のつなぎかたをいろいろとを工夫することができます。
頭をやわらかくしてこの「つなぎかた」を考えることが、
発想力のためのトレーニングになります。
言葉をどのように接続するかによって、そこから広がるイメージもがらりと変わります。
ここに言葉の化学反応の命運がかかっています。

前回はみんなで対話しながらひとつの物語を練り上げていったのですが、
今回は、自分自身でより深くイメージを膨らませてもらうために、各自で取り組んでもらいました。
それぞれにランダムに2つずつ言葉を選んでもらい、
想像力をはたらかせて、それをどのようにつなげれば良いかをよく考えて、
イメージしたことを、用意したプリントにメモしてもらいました。

Jちゃんは「ドア」と「マスク」という言葉を選びました。
最初は「ドアとマスクって、ぜんぜん関係ないやん!」と言っていたものの、
その、一見関係のないもの同士をつなげていくところに、物語作りの醍醐味があります。
最終的には「マスク 型の ドア」というイメージを得て、
家がマスクをしている様子を書いてくれました。
(「型」という漢字も自発的に書いてくれました。)
「だから、友だちが家に来る時、その家の中に入るのには、
マスク型ドアを開けないと入れないのです。」
まるで『不思議の国のアリス』のしゃべるドアみたいで、面白いイメージです。

Rちゃんは「星」と「まつぼっくり」を選びました。
「星 形をしている まつぼっくり(ちゃん)」とつなげたRちゃんは、
そこからこのような物語を展開させてくれました。
「まつぼっくりの国では1人だけほし形をしているまつぼっくりちゃんがいた。
みんなは星形のまつぼっくりちゃんを仲まはずれにする。『1人だけ星形だから」って。
星形のまつぼっくりちゃんは『どうして私だけこんな形に…』といつもおもっていた。
けど、星形のまつぼっくりちゃんにキセキがおきた…。それは……」
このあと、星形のまつぼっくりちゃんは、まつぼっくりの国を突然おそった敵から、
これまで自分を仲間はずれにしてきたはずの仲間たちを助けます。
「それをみていたなかまは星形のまつぼっくりちゃんにあやまり、なかよくくらしたとさ。」
Rちゃんらしい、やさしく素敵な物語の素描が完成しました。

Aちゃんが選んだのは「カワイイ人」と「億万長者」です。
「カワイイ人」と、「億万長者」、
どちらも「人」を表す言葉で、どちらも肯定的な言葉です。
Aちゃんは、そこを素直に「億万長者 は カワイイ人(がなれる)」というふうにつなげて、
容姿の良い女性はそのまま自動的にお金持ちになれる、と想像してくれました。
だからほとんどの場合、彼女たちの職業は「女優」なのだそうです。
「あと、ファッションにも気をつけて、
いつでも最新のファッションをチェックしてね。かみがたも!」
自身の作品『Paris バレエ Diary』にもつながる、
Aちゃんの明るい憧れの気持ちが、よく表れていると思いました。

Mちゃんが選んだ言葉は、「城」と「陸軍」でした。
ふだんのMちゃんの印象とは遠い、ちょっとものものしい言葉でしたが、
それでもやはり、その言葉のつなぎかたに、Mちゃんらしさが表れています。
「城 で戦う 陸軍」とするのではなく、
「陸軍 が作った 城」というふうにつなげてくれました。
「陸軍がたたかっていると、はずれたてっぽうの弾がつみかさなっていって、
大きくて、とってもりっぱな城ができた。」
この文章の横には「てっぽうの弾がつみかさなってできた城」の挿絵も描いてくれました。
流れ弾がいつのまにか重なっていってお城を造るなんて、
コミカルですらある、楽しいイメージです。

Hちゃんは「ダイヤ」と「長者」という言葉を選びました。
Hちゃんも「つなぎかた」をよく工夫してくれて、
「長者 の(持つ) ダイヤ」でも「長者 と ダイヤ」でもなく、
「長者 ” が “ ダイヤ」というふうにつなげてくれました。
長者がダイヤ、つまり、ダイヤでできた体をもった長者、ということです。
「このおじさんは、ダイヤでできていて、長者で、
ダイヤが大好きですごくよくばりな人で、ダイヤが大好きなんです。」
「ダイヤが大好きで」「ダイヤが大好きなんです」という繰り返しが、
「なにがなんでも」という気持ちをよく伝えています。
ダイヤが好きすぎてダイヤになったおじさんの挿絵もこのイメージにぴったりです。

(今回はKちゃんはお休みでした。)

この言葉遊びはやはり好評で、
「これやってるから新しい物語おもいついてんで!」と、
JちゃんとAちゃんが嬉しいことを言ってくれました。
プリントに物語の「さわり」を書いてもらうために時間がかかるので、
今回は、各自一回ずつの予定だったのですが、
結局二回ずつ取り組むことにもなりました。
こうしてクラスの雰囲気が盛り上がるのはとても良い傾向だと思います。
ただ、この取り組みに没頭しすぎて、本来の創作の手が止まってしまうのもどうかと思うので、
次週からは両者のバランスをとっていこうとも思っています。