この春から調査研究入門のクラスが再開しました。
以前のクラスで一度自分で調べてまとめるところまで経験したので、もうだいたいの感覚はつかんでもらている様子でした。
今回は「小説」ということそのものを取り上げたいということになりました。推理小説、歴史小説といったように、○○小説と呼ばれるものはたくさんありそうなので、その分類をするだけでも楽しそうです。
まず私のほうから「小説とは何か」、「小説はいつの時代にもあるのか」、「小説のおもしろさはどこにあるのか」、「ストーリー、登場人物、文体のどれが重要か」といった質問をしました。調べる前の感触や動機を明らかにしておこうという意図です。
その上で広辞苑と百科事典を参照しました。今時の新しい電子辞書には百科事典まで収録されているようです。それらを読んでいくと「小説」という語は坪内逍遥がnovelの翻訳語として『小説神髄』を通して世に知らしめたらしいこと、novelに関しては騎士道物語や悪者小説が由来となっていることなどがわかりました。
今では当たり前のものとして受け止められている「小説」を調べてみると意外な発見がありそうな予感がします。
中学・高校時代にこのような取り組みを経験できることは、将来大きな財産になると思います。
>いつの時代にもあるのか
手元の『ラテン文学を学ぶ人のために』(世界思想社) p.246 には次のように書かれています。
「小説──一定の長さをもった、散文による虚構の物語──の流行は、ギリシアでは後二世紀以降であるから、ネロー帝期(五四─六八)に書かれた『サテュリコン』は、西洋文学における長編小説の始まりと言える。
「散文による」という言い方は、韻文によるならホメーロスの作品その他があるわけだが・・・というニュアンスを感じさせます。
『サテュリコン』は映画にもなっていますが、今の若い世代が読むとどういう印象をもつのか、興味あるところです。
この次の週には「小説」という語について百科事典で詳しく見ました。それによると「小説」は韻文とはもちろん、散文とも区別されるとのことです。また、「虚構」という要素も小説とは必ずしも重なり合わないように思われます。虚構であったとしても神話は小説ではないでしょうし、ノンフィクション小説というジャンルがあったりもしますから。韻文と散文、虚構と事実などの軸を参照しながら、小説の分類をできればと思います。