福西です。
各自、ユークリッド『原論』の第1巻の命題を一つずつ証明しています。
R君は命題27の錯角についての証明をした後、続いて28、30、31と証明していきました。
命題28は同位角についてです。
一つの直線が二つの直線と交わっていて、それらが作る同位角が等しいとき、あるいは内角の和が二直角に等しいとき、その二つの直線は平行である。
ここでR君は1つ前にした命題27(錯角)の使い方にしばし悩んでいたのですが、「対頂角が等しいこと」(命題15)を使うことを思いつき、以下のように考えをまとめてくれました。
使える条件は「同位角が等しい」
→これを「対頂角が等しい」(命題15)を使って、「錯角が等しい」に変換する
→「錯角が等しければ平行」(命題27)
→だから「平行」
と。
また後半の「あるいは」の部分についても、使える条件を「内角の和が二直角」からスタートして、同じ結論に達してくれました。
そして次の命題30が、今回すごく「面白いなあ」と感じる問題でした。
同じ直線に平行な二つの直線は平行である。
まずはじめに一本の直線lを引き、そのlに対して平行な直線mを、lの上側に引きます。そして同じくlに対して平行な直線nを、今度はlの下側に引きます。そして、
l//m、l//n⇒m//n
ということを示します。まるで三段論法のような構造をしていますね。
それは一見当たり前のように見えるのですが、そこで補助線を一本思いついて、かっちり、かっちりと説明していくところに、「ああ、幾何学をやってるなあ」という実感がありました。
これに対するR君の証明が、ほぼ自力でできており、R君も自信がついたようでした(輝いていました^^)。とりわけ、出発点である三本の直線をl、m、nと自分で命名すること、そして、命題15(対頂角)より」「命題27(錯角)より」と、論拠を書き示している点に、しっかりとできていることを感じました。
その余勢を駆って、次の作図問題である命題31もクリアできました。
与えられた点を通り、与えられた直線に平行な直線を引くこと。
日常ではよくしている作業なのですが、実際、「本当に」平行な線を引こうとすると、ちょっと立ち止まって考えないといけません。
R君は、コンパスを使って、まず与えられた点を通る垂線を引きました。そして次が難しかったのですが、その垂線に対してまた垂線を引くことを思いついてくれました。そして、この2回目に引いた垂線が、今書かれるべき線だったことになります。残る問題は、それがちゃんと平行になっているかの説明です。
これがちょうど命題27(錯角)のいい応用問題になっていました。
錯角が等しければ平行だというのは、すでに知っているわけですが、そこで、任意の角度で表現されている「錯角」に、あえて特殊な「直角」を持ってこれるかどうかが、発想の転換となります。
つまり上の作図で垂線を引くことでできた二つの直角が、錯角になっており、直角でももちろん、命題27は成り立ちます。よって、平行だと言えるわけです。
これの達成感もまたひとしおでした。
一方のA君については、このあと稿を分けて書くつもりです。
山下です。
これも広い意味でクラシックスの勉強ですね。温故知新ということで、今後の展開を楽しみにしています。
福西です。山下先生、コメントをありがとうございます。
実は私自身も、上の作図問題については以前に「できたつもり」でいたので、改めて自分でも一から考え直すと、「あれ?これって、どうやるんだったかなあ・・・」となって、それまで十分に分かってなかったんだということを発見しました。そして改めて証明できた時には、やはり以前と変わらず「やった!」という気持ちの新鮮さを味わいました。幾何はやっぱりそういう魅力があり、面白いなあと思いました。
奇貨置くべしならぬ、「幾何やるべし」で、これからも、生徒たちと一緒に新しい発見を楽しみにしていきたいと思います。