『西洋の児童文学を読む 』B

『西洋の児童文学を読む』B

 金曜18:40~20:00 担当:加藤千佳  

<2025年度>

引き続き、『赤毛のアン』のシリーズを読みます。

【講師のメッセージ】

「西洋の児童文学」とひとことに言っても、「西洋」は広く、また「児童文学」にもさまざまなジャンルがありますが、本クラスでは2年以上、モンゴメリによる「アン・シリーズ」を読んでいます。主人公のアン・シャーリーは、幼い頃に父母を失った孤児ですが、空想とおしゃべりが大好きで、とても聡明な女の子です。アンの豊かな想像力は、平凡な田舎町を夢のようにきらめかせ、周囲の人々の日常をカラフルに彩っていきます。最初は、「何この子」と眉をひそめた人々も、いつの間にかアンに夢中に!アン自身も、養父母のマリラ、マシューから注がれる豊かな愛情と、周囲の人々の支えを受けてすくすくと成長していきます。現在読んでいるのは、シリーズ3作目の『アンの愛情』です。この作品では、18歳になったアンがプリンス・エドワード島を出て大学生となり、恋に勉強に奮闘しながら、より一層洗練された大人へと育っていきます。しかしその中には、大好きな幼なじみ、親友とのすれ違いや、田舎町であるアヴォンリーと、大学があるキングスポートとのギャップなども繊細に描かれています。その点も丁寧に読み解きながら、ファッションやインテリアなど当時の文化についても情報を補うことで、より物語に没入できるようサポートしています。また変わった表現が出てきたときには、みんなで原文をチェックすることで、翻訳のむずかしさと面白さを味わっています。

<2024年度>

『アンの愛情(モンゴメリ、村岡花子訳、新潮社)を読んでいます。

こちらの記事もご覧ください。

 

<2022年度~2023年度>

『赤毛のアン』(モンゴメリ、村岡花子訳、新潮社)

 4月からのテキストは、『赤毛のアン』(モンゴメリ、村岡花子訳、新潮社)です。ご存じの通り、プリンス・エドワード島の美しさとともに、見えないものに対する想像力の大切さが心にしみる作品です。

 男女問わず多くの読者がアンのことをもう一人の自分、アンの口癖である「腹心の友」(bosom friend)だと思ったことでしょう。「なぜなら友人は、いわば第二の自分であるから」(Est enim amicus qui est tamquam alter idem)というキケローの言葉(『友情について』80)を思い出します。

 物語の終わりに、次のような一文があります。

she knew that flowers of quiet happiness would bloom along it. The joy of sincere work and worthy aspiration and congenial friendship were to be hers; nothing could rob her of her birthright of fancy or her ideal world of dreams.

 アンは静かな幸福の花が、その道にずっと咲きみだれていることを知っていた。真剣な仕事と、りっぱな抱負と、厚い友情はアンのものだった。何ものもアンが生まれつきもっている空想と、夢の国を奪うことはできないのだった。(村岡花子訳)

 読んだことのない人はお楽しみに、読んだことのある人はまたアンの友達になりましょう! 新たな参加者をお待ちしています。 (クラスでは随所、英語の原文も参照します)

これまで扱ったテキスト:

  • 『白い盾の少年騎士』(上・下)(トンケ・ドラフト、西村由美訳、岩波少年文庫)
  • 『王への手紙』(上・下)(同上)
  • 『はてしない物語』(エンデ、上田真而子ら訳、岩波書店)
  • 『モモ』(エンデ、大島かおり訳、岩波文庫)
  • 『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス、高杉一郎訳、岩波少年文庫)