『東洋古典を読む』

オンラインのみ『東洋古典を読む』

水曜 18:40〜20:00 講師:斎藤 賢

<2024年度>

引き続き、『剪燈新話』を読みます。

<2023年度・冬学期>

『剪燈新話』の中から「永州野廟記」「牡丹燈記」など、一話ずつ選んで読んでいきます。『剪燈新話』は明代の瞿佑によって著された伝奇小説であり、「伝奇」の名の通り、普通には起こりえないような不思議な物語を多数収録しています。しかし、その内容はただ不思議な話を書き留めた、というものではなく、読者を魅了する巧みな筆致で物語を綴っており、文学的な面からも高く評価されています。

そのような『剪燈新話』の物語の中でも、幽鬼と人の悲恋を美しく描いた金鳳釵記はとりわけて感動を誘う一篇であり、漢文の学びのみならず、不思議な物語に興味がある人にとっても最適なテキストの一つではないでしょうか。

〔授業方法〕
受講生のかたには、事前にテキストを予習してきてもらいます。実際の授業は基本的に、

①受講生による訓読→日本語訳
②講師による解説

この①→②の繰り返しで行います。

 

<2023年度・春〜秋学期>

『燕丹子』を読み進めております。『燕丹子』は燕国の太子丹と荊軻による始皇帝暗殺事件を題材にしたもので、志怪を含む中国の小説の祖という位置付です。ご興味のある方はぜひ。

 

<2022年度>

〔授業計画〕
アンケートの結果、考証学の書と『春秋左傳正義』が候補にあがりました。そこで、今学期の第五回までは、まず考証学の書を読み進めていくこととします。その後、第六回目の授業からは、受講生と相談の上、継続して考証学の書を読むか、あるいは『春秋左傳正義』に移るかを決定します。

〔授業予定とテキスト〕

現時点での授業予定は以下の通りです。

第一回:顧炎武『日知録』殷紂之所以亡
第二・三回:王鳴盛『十七史商榷』劉項倶觀始皇・劉藉項噬項・漢惟利是視・爲羽發哀
第四回:趙翼『廿二史劄記』關張之勇
第五回:趙翼『陔餘叢考』眼鏡

<2021年度・冬学期>

冬学期は試みに『孟子注疏』を読み進めていくこととします。『孟子』は戦国時代に生きた孟軻なる人物の言行をまとめた書であり、孟母三遷の故事は聞いたことのあるかたも少なくないかと思われます。また、彼の説いた性善説などは日本でもよく知られており、古典としても申し分ないものでしょう。

日本でも『孟子』自体は昔からよく読まれ、本文に関しては訳書なども多く出版されています。ただ、訳書の場合はどうしても訳者の理解にそった訳や注を通して読むこととなってしまいます。それはそれで興味深く意義のあることですが、やはり原文を通して、かつての中国人が残した注釈を参考にしつつ読み解くことの意義も決して少なくありません。そこで本授業は『孟子』の注釈書である『孟子注疏』をテキストに選び、本文とともに注釈も一緒に読むことで、漢文読解の能力を身につけ、注釈に慣れることに加え、かつての中国人がどのように『孟子』を理解したのかをも考えていきたいと思います。宋代に科挙の試験科目ともなり、十三経注疏の一つともなった『孟子注疏』は、『孟子』本文と漢・趙岐の注に宋・孫奭が疏(注の注のようなもの)をつけた形式の書であり(ただし、疏は孫奭に仮託したものと言われています)、形式や内容の点で欠点が指摘されることもありますが、経学史上初めての『孟子』疏であることや、まま優れた解釈が見られることなど、その価値は決して低く見ることはできません。

また、『孟子』は歴史史料としても価値が高く、その対話篇は中国古代の雰囲気を彷彿させるに足るものでしょう。本授業では、注釈とともに『孟子』を読み解くことで、漢文の力をつけることから一歩進み、中国の歴史や文化などにも触れることができればと考えております。

冬学期は『孟子注疏』開頭の「梁恵王章句上」から読み進めていきます。授業では漢文の文法に関しても丁寧に解説していきますので、漢文ははじめてというかたもお気軽にご参加ください。

 

<2021年度・秋学期>

本講座では、今学期は『三国演義』を原文で読み進めていくこととします。『三国演義』、あるいは三国時代に興味関心を持たれる方は数多いと思われますが(かく言う私自身もそうです)、日本においては『三国演義』を中国語で読む機会はあまりないのではないかと感じています。もちろん、日本においては昔から『三国演義』は人気が高く、優れた翻訳がいくつも出版されており、三国志ファンの需要に応えてきました。しかしながら、中国で生まれた作品である『三国演義』を中国語で読むことは、日本語訳を読む時とは一味違った興趣があるのではないでしょうか。

授業では、先ずは第一回の桃園結義を読むこととし、以後は受講生の関心に沿いつつ読む箇所を決定します。頭から読み進めてもよいですし、官渡の戦いや赤壁の戦い、あるいは土井晩翠の「星落秋風五丈原」でも有名な、諸葛亮と司馬懿の激闘を描く五丈原での戦い、といったハイライトを読んでいくのも興味深いものとなるでしょう。

授業方法については、受講生のかたにはまずテキストを予習してもらい、授業時には①原文→②日本語訳の順で読んでもらいます。その後、講師が解説を加えていきます。『三国演義』は白話小説ですが、いわゆる漢文に文体が近いと言えますので、上記①の原文を読んでもらう際には、伝統的な漢文訓読をしてもらってもよいですし、中国語の経験のあるかたは現代中国語で読んでいただいても構いません。

またテキストには毛宗崗本を底本として校訂・注釈の加えられた『三国演義』(人民文学出版社)を用いますので、読みやすいものとなっております。

<2021年度・春学期>

受講生の希望により、『三國志集解』をテキストに選び、後漢末の英雄であり三国魏の実質的な建国者である曹操の伝記「武帝紀」を読み進めることに決定しました。現在は、曹操の父祖や彼自身の生い立ちに関する興味深い逸話の部分を読んでいます。隣人に豚を奪われても鷹揚に応対した曹操の曾祖父・曹節の、あるいは匈奴の使節に面会する時、自身の容貌がぱっとしないことを気にして部下と入れ替わり、侍衛の臣に成りすましたけれども、その英雄の気風は隠すことができず、匈奴の使節に見破られていた、といった曹操の逸話などは、三国志好きならどこかで一度は読んだことがあるのではないでしょうか。本書ではこのような人の好奇心をそそるエピソードに随所で出会うことができます。次回(5/12)は若かりしころの曹操が袁紹とともに悪さをはたらき、他家の新婚の嫁を脅して奪うも、逃げる途中に袁紹が下手をうち、曹操が機転をきかせて助け出す、という部分を読んでいきますので、三国時代に興味のあるかたはいつでもご参加ください。

<クラス紹介(クラス開設時)>

本講座では「漢文を原文で読めるようになる」ことを目標とします。そこで、授業方針としてはまず返り点のついたテキストを読むことで漢文に慣れ、その後「白文」に挑戦していくこととします。もちろん、返り点のついたテキストと白文のテキストの比重は受講生の方にあわせて調整する予定です。例えば、漢文にあまり慣れていない、ということであれば基本的に返り点のついたテキストを用い、最後の一回は白文にチャレンジしてみる、ということでも良いですし、既にご経験のある場合は授業の初めから白文を読む、ということも可能です。

授業で実際に使うテキストの候補として三種類をご紹介します。

①『三国志』:西晋の人陳寿の手になる、三国時代の史事を記した書物。簡潔な名文として知られます。なお、劉宋時代の裴松之により注が加えられており(裴注)、興味深い逸話などを読むことができます。

②盧弼『三国志集解』:盧弼が『三国志』に関する多くの注釈を集め、本文及び裴注に付したものです。三国時代の出来事や人物についてより深く知りたい、という方には最適の書だと思われます。

③羅貫中『三国演義』:明代に成立したとされる歴史小説であり、『水滸伝』『西遊記』『金瓶梅』とならんで四大奇書と称されます。『三国演義』が長きにわたって人の心を躍らせてきた英雄活劇であることは言を俟ちませんが、その文体も他の三書と異なり文語に近く、訓読の練習にも適しているでしょう。

いずれを読むかは受講生の方の希望に沿って決定したいと思います。漢文に触れてみたい、白文を独力で読めるようになりたい、あるいは三国志の世界をより深く知りたい、といった方にはぜひご参加いただければと思います。