山の学校に学んで ーー私の合格体験記

このたび京大文学部に現役合格した受講生の合格体験記をご本人の許可を得て掲載します。

私は、小学校1年生のとき「しぜん」クラスに入って以来山の学校にお世話になり、この度、特色入試で京都大学に合格することができました。もちろん、私は特色入試を前提に山の学校で長年学んできたわけではありません。これまで受講したクラスは、この分野を深めたいという好奇心から通っていました。その好奇心に山の学校の先生方が十二分に応えてくださったことで、強いて勉める勉強を超え、好きなことを学ぶおもしろさに気づくことができました。

長年通っているクラスに「歴史」クラスがあります。このクラスは小学生の頃に私がお願いし、作っていただきました。クラスでは、歴史に関する書籍の精読、講読を基本に、その内容を理解するだけに留まらず、テキストから疑問を見出し、深めていきました。テキストに対し受け身ではなく積極的にアプローチして自分なりの論点をもつという姿勢は、私の学びの基礎になっています。このクラスを受講するまで、私の視野は日本史に留まっていましたが、西洋史がご専門の先生に学んだことで、日本史と世界史のつながり、さらには他の学問分野との繋がりにも目が向くようになり、私が大学で専攻したいと考えている歴史地理にも結びつきました。単に歴史の知識やテキストの読み方を習っただけではなく、学問の深さや学問に対する向き合い方も教えていただきました。

書籍の精読は、小学生から中学生の間にお世話になった「西洋児童文学を読む」のクラスでも学びました。学校の国語でひとつの答えを目指すのとは違い、ここでは個々人が自分なりの解釈を試みます。クラスのメンバーと同じ場で同じ作品を読み、気づきを共有するという経験は何度繰り返しても常に新鮮で刺激の多いものでした。

また、中学生、高校生のときには英語数学でもお世話になりました。自分の進度に合わせてきめ細かに対応していただき、一般的な進学塾の環境が肌に合わない私にはとてもありがたかったです。受験競争を煽るような雰囲気は全くなく、先生方には当該科目のみならず、勉強のやり方や大学の様子について教えていただいたり、学校生活の相談に乗っていただいたりと、多くの面で支えていただきました。私は数学が著しく苦手だったのですが、山の学校の数学クラスを苦に感じたことはありません。

私は今、日本人と山の関わりについて歴史地理を軸に研究しようと考えています。高校でワンダーフォーゲル部に所属していたことがこのテーマ設定の動機の一つでしたが、そもそも高校で山と向き合おうと決めたのは、「しぜん」クラスで山のおもしろさを体感していたからです。さらに言えば、お山の幼稚園に3年間通ったことが、山との関わりの原点です。

幼稚園から数えて15年、お山で学んできたのは、学ぶことそれ自体の楽しさだったと思います。山の学校は私の好奇心を育ててくださいました。あらかじめ設定された型ではなく私の興味や疑問を出発点に授業を進め、またすぐに答えを示すのではなく自ら思考する時間を大切にしていただいたことで、普段から疑問を放っておくことはせず、答えを探す癖がつきました。

もちろん、特色入試の対策も普通の受験勉強もかなり厳しいものでした。それでも妥協せず頑張り抜くことができたのは、大学での学びに対する憧れがモチベーションになったからです。山の学校の先生は現役学生や大学教員の方々です。先生方から大学での学びについて日々教えていただくなかで、この大学で学びたいという意欲が強まってきたように思います。山の学校に導かれ、ようやく大学への入り口にたどり着きました。この12年間を自信に大いに学んでいきたいです。(澤田櫂)

なお、澤田櫂さんには4月から中学英語、高校英語をご担当いただく予定です。