山びこ通信(2013年度・冬学期号)に寄稿されたエッセイを転載いたします。
『山の学校での実践を振り返って』 浅野直樹
今回、この原稿を書くにあたり、自分がいつから山の学校に来ていたのか調べてみました。そうすると2006年の4月からだったので、もうすぐ丸7年ということになります。当時小学校の低学年だった生徒がこの春からは高校生になるのですから、年月の流れを感じさせられます。
7年間に渡って山の学校の中に入っていたのですから、思い出話をするだけでも山の学校の雰囲気を伝えられることでしょう。
他ではあり得ないようなクラスを実現できたことがまず思い出されます。1つには「英語講読(ハリー・ポッター)」です。読書会として、有志といっしょに第1巻を1冊丁寧に読んだことは大きな自信になりましたし、自らの英語力も向上しました。この冬学期からは受講生に恵まれ、第2巻を楽しく読み進めています。もう1つには「調査研究入門」です。自分の興味のあることを調べ、まとめて発表するというのは学問の根本だと思います。大学ではそうした学問をするのが難しくなってきたと言われているだけに、そのような場を持つことができたのは意義深いです。
クラスにはなっていない企画もいろいろありました。小学生の「勉強会」、中学生以上の「何でも勉強相談会」はその設立から関わってきたので、思い入れもひとしおです。どちらの会でも学年を超えて教え合う姿が頻繁に見られました。そうしていろいろな人の姿を見て、話をすると、自分なりの学習方法を形成する助けになります。これは何も教えられる側に限ったことではありません。人に教えることで自らの理解が深まるという経験はおそらく誰にでもあることでしょう。自分の生き方を再確認すると言う意味で、「青春ライブ授業」にも同じことが言えます。
他の先生方のクラスに入らせてもらったこともありました。大人になり、特にこういう仕事をしていると、何かを教わるという機会はなかなかありません。「ラテン語初級文法」を受講していたときは本当に新鮮な気分でした。食わず嫌いだった状態から、一通りやったという手ごたえが得られる状態まで導いていただけたことには今でも感謝しております。「ウェブプログラミング入門」でも、独学で感じていた壁をおかげさまで乗り越えることができました。どのような問題に突き当たってもそれを軽々と解決する先生の姿は非常に頼もしかったです。
そして何よりも日々のクラス1回1回が貴重な思い出です。山の学校は少人数制なので、一人一人のことを今でもはっきり思い出せます。個性はそれぞれですが、生き生きと学んでいることでは小学生から大人まで同じです。入試に合格したという知らせを聞いたこともあれば、失敗したという知らせを聞いたこともあります。どちらにしても山の学校で学んだという事実は消えませんし、自分の頭で習得したことも残ります。
10年、20年、さらには100年、200年先にもつながるような実践が山の学校でできるように、これからも目の前の一つ一つの瞬間を大切にしていきたいです。