浅野です。
前回は英作文でしたが、今回Sさんは長文読解をしました。
それでも英文を読んで意味がわからない箇所があったようで質問を受けました。それは”It’s between the two of you.”という箇所です。ここだけを読んでも「それはあなたがた二人の間にある」くらいにしかわかりません。”It”が何を指すかが問題なのですが、to不定詞やthat節はありませんし、その文の直前を見てもそれらしい単数名詞はありません。句や節、文全体を指すのかなと考えてもうまく見つかりません。そういうときこそ文脈に頼ります。そのあたりの内容にざっと目を通すと、アメリカでは子ども同士がケンカしているときに親は口をはさまないといったことが書かれていました。そこでピンときました。先の質問箇所は親の発言で、意訳すると「お前たち二人の問題なのだから私は知らないよ」といった内容です。”It”は漠然とした状況を指す用法でした。
このように細部の理解を積み上げるよりも、全体の内容から考えたほうがわかりやすいこともあるので、多少わからないところがあってもいいからざっと全体に目を通す練習をしてはどうかと提案しました。試験では時間が限られていますし、実生活でも大学に入ると何ページもある論文や本を読むことが求められるので、それを細部から完璧に積み上げようとすると時間がいくらあっても足りません。
誤解を招かないように付け加えておきますと、それはあくまでも英語の構造をつかめるようになってからの話です。ゆっくりと読んでもわからないものをさっと読んでわかるはずもありません。
Yさんは細かな理解を積み上げているところです。今回は仮定法が中心で、同じ内容になるように書き換えよという問題で質問を受けました。
He’d be surprised to hear the news.
=( ) ( ) ( ) the news, he’d be surprised.
まず上の文の意味を尋ねました。すると「その知らせを聞いて彼は驚いた」と答えてくれたのですが、少し意味合いがずれています。それをはっきりさせるために次は「このHe’dの”‘d”は何が省略されているのか」と聞くと、「had?」と答えてくれました。確かにhadがそのように省略されることもあります。しかしその後が”be”と原形になっているので、この場合省略されているのは”would”です(hadなら過去完了形(been)になるはずです)。となると正しい意味は「その知らせを聞くと彼は驚くだろう」です。実は仮定法的な表現なのですね。ということで書き換えると”If he heard the news, he’d be surprised.”となります。
英文読解のコツは実際に読みながら会得するほかありませんが、浅野先生がお書きになったことはいつもながら大事なことです。
後半の書き換え問題のやりとりは臨場感にあふれるものです。
>「その知らせを聞いて彼は驚いた」
私は意地悪なので、この日本語の英語は何か?とよく学生に問うたものです。He was surprised to hear the news. となりますので、当然ながら、He’d be surprised to hear the news.とは別の英文となります。
私は、英語を生徒や学生に教えるとき、ほとんど中学の英語ばかり教えてきた記憶がありますが、その理由は今例にあげたケースを見てもわかるように、本当に中学で学ぶことが身についていたら、「その知らせを聞いて彼は驚いた」とは訳さなくなるからです。
この生徒さんは十分基礎の力があると私も思いますが、それでも、思わぬ方向からプレッシャーがかかると、ついつい凡ミスをするわけです。だから、基礎レベルの英語は居眠りしても英語が口から出てくるくらい、基本の英文は血肉となるまで自分のものにする(日本語を見て英文が瞬間に出てくるまで暗記する)ことが重要です。
私はこの生徒さんは基礎があると言いました。だから、浅野先生がもし、「それだと He was surprised to …となりますね?」と言われたら、「あ、そうだった!」とすぐにピンときたと思います。このやりとりが心の中で自問自答出来るようになれば、今回のような問題にでくわしたとき、正解を知ったときの心の「納得感」がぜんぜん違ってくると思います。