岸本です。
今日は、2/4(火)の休講に対する補講でした。
久しぶりに、寺田寅彦の作品を読みました。
『漫画と科学』というエッセイです。
現代では、漫画も一つの芸術作品として扱われることも珍しくありませんが、一方で漫画にたいする偏見ももちろん残っています。
そうした偏見がもっと強かったであろう大正時代に、この『漫画と科学』は書かれました。
しかし、寺田は漫画は一概に低俗なものだとは考えません。
彼は、漫画と科学の類似点を主張することで、漫画の擁護を図るのです。
彼によれば、漫画の基本は現実の対象の特徴を生かしたデフォルメです。
この特徴、換言すれば物事の本質をとらえる作業が、科学において実際の現象から特定の法則を抽出する作業と類似しているとの主張が作品では展開されました。
彼に言わせれば、どちらも「真」を求めている営みなのです。
また、一般的な絵画作品と漫画には漠然とした違いはあることは認めるものの、寺田はその間に境界線を引くことは困難だと考えていました。
もちろん、低俗な漫画もあるのですが、いわゆる芸術としての絵画に近い漫画があることも認めているのです。
大英博物館の日本のコーナーに、漫画が展示されているのを実際に目にした私からすれば、寺田の主張は納得のいくものです。
100年近く前に、すでにそのような主張をしていることに、寺田の卓見性を感じずにいられませんでした。
生徒さんとは、寺田の漫画の評価について議論になりました。
彼は「漫画」全体を擁護しているわけでないと、生徒さんは指摘してくれました。
確かに、彼は漫画の中には子供に悪影響を与えるものがあるとも言っています。
結局、「漫画だから」と中身も詳しく見ずにレッテルを貼って批判する人々への反論ではないかと、私たちは考えました。
この作品から学ぶべきは、レッテルに惑わされずに、自ら判断する重要性ではないでしょうか。
残った時間は、いつものように新聞記事の読解を行いました。
次回も、また短い文章の読解を中心に行う予定です。