岸本です。
最近寒さが身に応えますが、今回読んだ『人間失格』の場面では葉蔵の「不幸」がさらに陰惨になっていくという、別の意味で「寒さ」を感じたのではないでしょうか。
今回も、慣用句の用法と『人間失格』の読解を進めていきました。
文脈に合うことわざを選ぶ問題です。
今回は、「水を差す」や「目を丸くする」など、聞いたことはあるだろうものが出題されていました。
初見だという「白羽の矢が立つ」は、矢が刺さった家の者が選ばれるという逸話をイメージできれば、理解しやすくなるでしょう。
想像を働かせて、語彙を豊かにしていきましょう。
『人間失格』も、あと少しで読み終わるところまできました。
今回は、睡眠薬の大量服薬による自殺未遂を起こした後の様子をみていきました。
自殺未遂の道具となった睡眠薬は妻ヨシ子が購入していたものでした。
そのこともあって、葉蔵とヨシ子との溝はさらに広がっていきました。
家庭に居づらくなった葉蔵は、再び酒におぼれ、ついには喀血して体を壊してしまいます。
生徒さんとは、ここで主人公葉蔵について改めて考えていきました。
葉蔵はこの事件の際、ヒラメが「タテマエ」を使っていることに気付けるまでに「世間」を理解していましたが、なぜ「タテマエ」を用いるのか、そこは「わかるような、わからないような」状態でした。
「世間」の正体に気付きつつも、それを動かす「他人の心」を葉蔵はどうしても理解できないのです。
このことは、別の場面でも読み取ることが出来ました。
たいてい不幸は自分ではどうしようもない原因があるものですが、葉蔵の場合、自らの不幸が自分の責任である事を自覚しています。
しかし、その自分の責任がどうして生じるのかは理解しきれていないのです。
自分が「わがままもの」なのか、「気が弱すぎる」のかはわからないのに、「とにかく罪悪のかたまりらしい」ことしかわからない。
これが、葉蔵にとって致命的だったということが、生徒さんと議論してわかってきたことです。
さて、葉蔵は喀血の後に向かった薬屋で、そこの奥さんと出会います。
この出会いが、葉蔵に最後の「不幸」を惹き起こします。
はたして葉蔵はどうなるのか、来週はその「不幸」を読んでいきます。