高木です。
先週に引き続き、今日も外を散策しながら詩を作りました。
先週とは別のコースです。
道の真ん中で猫が腹這いになっていて、
暗示的な細い抜け道があって、
斜面にあざやかな紫陽花がこぼれていて、
そこここに別世界への藁葺き門が口を開けているような、
そういう散策コースでした。
教室に帰ってからそれをもとに詩を書いて、
それぞれに発表してもらいました。
散策中も、教室でも、言葉を生みだす喜びのなかで、みんな活き活きとしていました。
この場でも彼らの作品を、一篇ずつですが、発表したいと思います。
(残念ながらA君はお休みでした。)
一石二鳥だね
N・H
夏にはね
青っぽい色がいいですね
長い時間あそべるようになりますね
あー
遊び場にね
きれいなね
日光がさしている海のようにね
アジサイがね
さいているね
一石二鳥でいいね
うれしいね
石段沿いの斜面にうつくしい青紫色の紫陽花を見つけたH君は、
その花の色を何に喩えようか、ずっと考えていました。
「日光がさしている海」という表現には、H君の想いがこもっています。
また、その紫陽花の青色を、夏の夕闇の青い光と並べているところに、
深い詩情が感じられます。
紫陽花の鮮烈な色彩に導かれるままにH君は詩を生み出してくれました。
「ね」で統一されたリズムも、この詩のやわらかい感じをよく演出しています。
アリにとっての影……
T・K
アリは気付いた
影が近づいている
一歩ずつ
ドスン、ドスンと
たまらずアリは
大急ぎで逃げた
しかし
その影は
アリにとっての時速100kmぐらいの
スピードで
あと3m
あと2m
あと1m
あと……50cm
あと2cm
ドスン
あ、もうだめだ、とアリは思った
しかし
その影は前にとおりすぎていった
その影の正体とは
なんと
アリの視点で書かれた面白い作品です。
「あと3m/あと2m/あと1m/あと……50cm/あと2cm」と迫ってくる「影」は、
その正体が語られないまま、アリの視界から消えて行きます。
おそらく、アリを踏みつぶしそうになった自身の体験から着想を得ているのだと思われますが、
「なんと」の先をどうするか考えたすえに、K君は、
アリの視点に徹して、あくまでも「影」を「影」のままにとどめることを選びました。
あえて語られなかった空白が、この詩の奥深い味わいを形づくることになりました。
このクラスは今日で春学期の最後の授業でした。
また夏休み明けに、元気な姿を見せてくれることを楽しみにしています。