ドビーが騒ぎを起こして3日後からです。
ハリーは狭いところに閉じ込められたまま、解放される気配がありません。
Now the Durseleys knew they weren’t going to wake up as fruitbats, he had lost his only weapon.
「今やダーズリー家の人たちは、フルーツコウモリとして目覚めることはないだろうと知っていたので、ハリーは唯一の武器を失ったのである」が直訳です。Now (that)は「今や…なので」という接続詞として用いられます。フルーツコウモリが何かは措くとして、asは前置詞で用いられると「~として」という意味です。ハリーの唯一の武器とは「魔法」あるいはもっと正確に言うと「魔法を使うぞと言って脅すこと」でしょう。
ハリーは空腹のまま眠りに落ち、自分が動物園のおりに入れられて見世物にされている夢を見ます。印象的な場面です。そしてダッドリーがおりをがたがたとゆすっているのにハリーは文句を言いながら目をあけます。そこには何とロンがいたのです。はっきりとは描かれていませんが、ロンがおりをがたがたとゆすっていた音が、夢の中ではダッドリーになっていたのではないでしょうか。
ここから第3章です。ロンはハリーが魔法を使ってしまったことを知っていました。そのことを指摘されたハリーはこう言い返しました。
Bit rich coming from you
この意味がなかなかわかりませんでした。実はアメリカ版では”You should talk.”となっていました。それなら「よく言えたもんだね」くらいの意味です。ロンは魔法を使ったと思しき車に乗ってきたので、前後の文脈と合致します。richには「ばかげたこと」といった意味もあるので、「お前のほうがちょっとばかげている」と取れば何となく意味がわかるような気がします。少なくともこのままでは一般的なアメリカ人にとってわかりにくいので書き換えられたのでしょう。
ロンたちによると、その車は父が魔法をかけたので、自分たちが魔法を使ったわけではないから大丈夫だとのことです。その車の物理的な力でおりを破壊して脱出を図りました。ハリーがホグワーツで必要な物を取り出す際も、ヘアピンで鍵を開けたので魔法は使っていません。
そして荷物も積んで出発しようかというときに、ヴァーノンおじさんが「このふくろうめ!」と大声を出しました。そしてふくろうのヘドウィグを忘れていたことに気づきました。ヘドウィグが忘れられてはたまらないと鳴き声を上げたのか、それとも物音をおじさんがフクロウだと勘違いしたのかは判然としません。荷物を積み込んだ後ですし、”screech”とあるので実際のふくろうの声ではないかと推測できます。screechとscream、screakなどの微妙な違いは外国語話者にはなかなかつかめません。
おじさんに脱出を見つかってしまいますが、すんでのところで逃げ切りました。道中でハリーはロンやフレッドとジョージにドビーの一件を話しました。そうするとハウスエルフの性質からしてドラコ・マルフォイが怪しいのではないかという話になりました。学年が違うフレッドとジョージはドラコのことは知りませんでしたが、おそらくはその父であるルシウスのことは知っていました。
Lucius Malfoy came back saying he’d never meant any of it. Load of dung — Dad reckons he was right in You Know Who’s inner circle.
「ルシウス・マルフォイは、自分はそんなつもりは全くなかったと言いながら戻ってきた。くそ食らえだぜ。パパはあいつが例のあの人のまさに中枢にいたと考えているのさ」といったところでしょうか。”load of dung”は直訳だと「くそ食らえ」くらいでしょう。日本語版では文脈から「嘘八百」と訳されていました。
ロンたちのお父さんは魔法省で、マグルの物に魔法がかけられて引き起こされたトラブルを処理する仕事をしているようです。例えば魔法がかかったティーポットが、それと知らず使ったマグルにお湯をかけたといったトラブルです。しかしそのお父さん自身はマグルの物に興味津々で、自分でもたくさん所有しているようです。ですので普段自分がしている強制捜索が自分の家に来たら、逮捕されるのではないかとお母さんが心配しています。
このあたりで今回は時間になりました。
記録を残していただきありがとうございます。私にとって英語が難しいと感じる理由は、語彙が圧倒的に多い事に加え、熟語や慣用句、俗語も山ほどある点です。大昔、アルクが出始めた頃、無我夢中で速読や多読に挑戦した日々が懐かしいのですが、結局コップで海の水を掬う感覚が抜けきれず、今に至っています。先生のクラスは、そうした一つ一つの表現との出会いを大切にしながら、ゆっくりじっくり進めて下さっていると感じます。駆け足では得られない豊かな学びを求めておられる点で、このクラスにエールを送りたいと思います。
応援ありがとうございます。おっしゃるとおりで、熟語や慣用句、俗語にいつも悩まされます。それでも文脈の力を借りつつ、何人かで案を出し合えば、それなりのところに落ち着くことがほとんどです。前置詞や動詞の中核となる意味合いを考えることになるので、いい訓練になります。