5/25 中学ことば

高木です。

今日も、授業のはじめに、みんなで賢治の『烏』の朗読をしました。
これで三週目になります。
みんな、この詩が持つ「音」に、だいぶん馴染んできたようです。

「読書が苦手だ」と言っていたH君も、一度もひっかからずすらすらと朗読できるようになりました。
またA君は、声に強弱をつけたり、抑揚をきかせたりして、情感ゆたかに朗読してくれました。
A君の朗読を聴いたH君は、二巡目では抑揚をつけて朗読してくれました。
二人とも、詩の「音」を楽しんでくれているようでした。
また、お互いに刺激し合う良い関係が生まれているようです。
(K君は学校のクラブの影響で遅刻していて、残念ながら朗読には間に合いませんでした。来週に期待!)

朗読の後は、先週、途中まで進めていたこの詩の感想文を書いてもらいました。
以前「自己紹介文」に取り組んだときと同じく、原稿用紙に向かう彼らは真剣そのもので、
思わず胸にぐっとくるものがありました。

書いている途中で、少し前に書いた内容につけ足したいことが見つかったH君は、
以前の自己紹介文のときは、註釈記号をつけて文章の途中に書き足してくれていましたが、
今回は、別の原稿用紙に最初から書き直してくれていました。
もちろん初稿なので、別に註釈記号をつけても構わないのかもしれませんが、
それよりも、こうして自分の文章に真摯に向き合い、書き直しを惜しまない姿勢が素晴らしいと思いました。
今日も、自分の手の黒ずみを見て「おお、こんなに!」と驚き、ニコニコしていました。

そのH君が、向かいの席に座っているK君がすらすらと文章を書く様子を見て、
「なんでそんなに速く書けるんやろうな…」と感心していました。
私には、そのときK君が言った言葉が、非常に印象に残っています。
「でも本当に大事なのは速さじゃない。
ゆっくりでも、じっくり考えて書けてるんやから、それで良いと思う。大事なのは内容や。」
本当にその通りだと思います。
H君は、作文クラスの先輩に「うん、わかった」とうなずいて、
顔を原稿用紙にくっつけるようにして、続きに取りかかりました。

そういう意味では、A君もまた、熟考と推敲を重ねるタイプです。
彼は原稿用紙に書きはじめる前に、
しばらくの間、頬杖をつきながら、じっと空中の架空の一点を見つめています。
それからおもむろに書き出して、一段落書けば、また立ち止まり、考えにふけります。
またA君は、詩の本文の知らない言葉については既に調べたはずなのに、ときどき広辞苑を引きます。
なぜか。
彼は、既に知っている言葉についてもっと深く知るために、辞書を引いているのです。
彼からは、この『烏』という詩についてとことん考え抜いてやるぞ、という静かな気迫が伝わってきます。

蓋を開けてみれば今日も、最初に朗読に取り組んだのを除けば、
一コマまるまる原稿用紙に向き合っていました。
しかも、その一時間以上の間、彼らはけっして緊張感と真剣さを失いませんでした。
彼らの集中力もさることながら、その持続力も大したものだと思います。

次回は、今日書いた感想文を発表してもらいます。
それから、互評と添削へと移ります。