「歴史論演習」クラス、4月から始まります!

福西です。新クラスの紹介です。

『歴史論演習』

日時:火曜18:40-20:00

講師:林 祐一郎

授業形式:オンライン

テキスト:

春学期 『科学 vs. キリスト教:世界史の大転換』(岡崎勝世、講談社) 『歴史探究のヨーロッパ:修道制を駆逐する啓蒙主義』(佐藤彰一、中央公論新社)

秋学期 『ランケと近代歴史学』(佐藤真一、知泉書館)

冬学期 『歴史家ミシュレの誕生:歴史学徒がミシュレから何を学んだか』(立川孝一、藤原書店)

   

講師からのメッセージ:

「すべての歴史のなかには神が宿り、生き、また認められる。いかなる行為も神を証しし、いかなる瞬間も神の御名を説いている。とりわけ大いなる歴史的関連にそれが見て取れるように思われる。この歴史的関連は、神聖な象形文字のように究極のところ把握され保たれて現存する。ことによるとよりよく見通しの利く将来の数世紀のために、この大いなる歴史的関連が見失われることがないためである。さてどうなろうとも、われわれとしてはこの神聖な象形文字を解読するだけである。このようなやり方でもわれわれは神に仕えるのであり、このような仕方でもわれわれは聖職者であり、教師でもあるのだ」(佐藤真一『ランケと近代歴史学』知泉書院、2022 年、43 頁より筆者重引;Ranke an Heinrich Ranke vom Ende März 1820, in: Dietmar Grypa (Hg.), Leopold von Ranke, Briefwechsel. Historisch-kritische Aufgabe, Bd.1: 1810-1825, De Gruyter Oldenbourg, Berlin/München/Boston 2016, S. 152 f. より佐藤引用)。

歴史家レオポルト・フォン・ランケ Leopold von Ranke(1795-1886)は、「実証的」な近代歴史学を創始した人物の一人として数えられます。同時に彼は、信心深いルター派牧師の家庭に生まれ育ち、本人もキリスト教徒として自己を規定していました。もちろん、当時は現在のように無神論を標榜するのが一般的でなかったことを考えれば、こんな記述が見られるのは珍しくないと言えます。彼の宗教性を殊更に強調するのは、適切ではないかもしれません。それに、この記述は素朴な敬虔主義の信仰に傾倒する弟ハインリヒへ向けた手紙の一部ですので、そんな弟に寄り添った形で自分の意見を表明した一種の外交的話法だと解釈することもできます。しかしながら、ランケは他の場面でも宗教的な表現を多用していますし、そんな表現が説得的であるくらいには、一人の断固たる信仰者として歴史を書くという姿が、当時は相当の意味を持つものだったのです。そこには信仰と学問との相剋、広く言えば情熱と誠実との相剋、あるいは両者の矛盾なき一体化がありました。

新しく開講予定の「歴史論演習」は、「いまここ」の現在から過去を意味づけて語り直すという我々人類の創造的な営為を、個別具体的な事件や人物にかんする批判的な読書を通じて回顧するという試みです。今年度のテーマは「ヨーロッパにおける近代歴史学の誕生」。春学期は岡崎勝世『科学VS.キリスト教―世界史の転換―』(講談社現代新書、2013年)と佐藤彰一『歴史探究のヨーロッパ―修道制を駆逐する啓蒙主義―』(中央公論新社、2019年)を、秋学期は佐藤真一『ランケと近代歴史学』(知泉書院、2022 年)を、冬学期は立川孝一『歴史家ミシュレの誕生―一歴史学徒がミシュレから何を学んだか―』(藤原書店、2019年)を読みながら、このテーマそれ自体について、またこのテーマをめぐる研究の成果と限界について、皆さんと一緒に考えていきましょう。一先ず、春学期に使用する二冊をできるだけご自身で入手していただいてから臨むことを、受講予定の皆さんにお勧めします。この授業の各回は、講師による専門的な解説(前半)と、受講生の皆さんを交えた双方向的・複方向的な議論(後半)から構成される予定です。できるだけ議論がしやすい雰囲気作りを心がけますので、皆さんの積極的な参加を期待します。

(林 祐一郎)

このチャンスに、ぜひご参加ください! お申し込み、受け付け中です。(>こちらのフォームメール)