福西です。
古典語の夕べ、アーカイブ視聴のご案内です。
2022/11/23に開催された、ラテン語の夕べ『ルクレーティウスのラテン語』(講師:山下太郎)より、内容を一部抜粋でご視聴頂けます。(>こちら)
夕べでは、ウェルギリウスが受けたルクレーティウスの影響についての話がありました。
ルクレーティウスは『事物の本性について』第4巻で、「愛を遠ざけよ」と忠告します。かけがえのない個は、最初から追い求めるな、と。それは(失った時のショックが大きくて)心の平静を乱すから、と。
それを受けて、ウェルギリウスは『農耕詩』第3巻で、次のように発展させます。「農夫よ、家畜(失って困るもの)を失っても大丈夫なように、たえずスペアーを用意せよ」と。「最良の日というものはすぐ失われるから」と。
しかしウェルギリウスは、さらにもうひねり、加えています。
それが「かけがえのない個」の場合はどうなるのだ、と。
それが「オルペウスとエウリュディケー」のエピソードです。みなさんご存じ、「後ろをふりかえってはいけない」というあれです。
そして、そのエピソードの外枠をなす「アリスタエウス物語」という箇所。アリスタエウスは蜜蜂飼いです。エウリュディケーに横恋慕し、彼女を死なせてしまった罰で、飼っていた蜜蜂をすべて失います。それを取り戻すまでの過程が描かれます。(『農耕詩』第4巻)
オルペウスは、愛する妻を失って心が乱れるあまり、死に至りました。
アリスタエウスは、蜜蜂の再生をなしとげ、心の平静を得ました。
かけがえのない「個」を追い求める愛と、常に「スペアー」を用意する技術と。その二つの違いに、読者は心を打たれます。
ご興味のある方は、上記の動画と、山下先生のこちらの記事をご覧ください。