浅野です。
Kさんは先週に予想したとおり、微分の一つの山場である増減表はもう大丈夫なようです。学校で小テストがあり、その答案を見せてくれたのですが、「最大値」と書くべきところを「極大値」と書いてしまって1点引きになっていたところ以外は満点でした。事前に自分で増減表を追究して自分の理解の度合いを明確にした後に質問をしてくれたのがやはりよかったと思います。
Cさんは数列の単元を終えようかというところまで進んでいます。等比数列の和の公式を使うことはできるけれども、たまによくわからなくなるという質問を受けました。そう感じる人は多いと思いますので、ここですっきりさせておきます。
教科書や参考書に載っている公式を覚えてもよいのですが、原理的に導くほうが応用することもできてよいと私は思います。例えば次のような問題を考えてみましょう。
初項が3、公比が2の等比数列の第n項までの和を求めよ。
求める和をSとおいて書き出してみると、
S=3+3・2+3・2^2+3・2^3+…+3・2^n-1
それを公比倍すると
2S=3・2+3・2^2+3・2^3+…+3・2^n-1+3・2^n
これらをうまく並べて引き算をすると
S=3+3・2+3・2^2+3・2^3+…+3・2^n-1
-)2S= 3・2+3・2^2+3・2^3+…+3・2^n-1+3・2^n
————————————————————
-S=3-3・2^n
S=3・2^n-3
となります。
少し手間はかかりますが、このように並べて書くと一目瞭然で、n-1項までの和を求めよと言われたとしても迷いません。
Aさんは模試の復習に取り組みました。当日に解けなかったところをじっくりと見直していました。模試を有効活用してくれています。
解答を読めばわかるけれども自分で解法を思いつかないと話してくれました。そこでいくつかの問題についていっしょに解答の方針を考えました。
二次関数の範囲では与えられた関数がすべての象限を通過するように変数の値を定めよという問題がありました。この手の問題は図を描きながら丁寧に場合分けするのがポイントとなります。いくつか適当に関数のグラフを描いてみて、題意を満たすにはどのような条件を付ければよいかを考えます。その際にグラフが上に凸か下に凸か、頂点がどこにあるか、x=0のときのyの値が正か負かなどに着目します。
もう一つ苦労したのは整数問題です。変数が含まれる二次方程式が与えられて、それが自然数を2つ解に持つような変数を求めたりする問題です。多くの場合、こうした整数問題は一発で答えを求めることはできません。都合がよい形に因数分解して数え上げるのです。整数問題では一義的に解を定めようとせずに、うまく式変形して数え上げるのだという方針を伝えました。
三者三様、じわじわと数学の自信というものが熟しつつあるように感じます。数学はひたすら問題を解いているとどこかでトンネルを抜け、数学そのものが好きになる、もっといえば、数学への「信頼」を揺るぎないものとして持つことができる時期が訪れると思います。それにはいろいろなルートがあるのでしょうが、やはり計算に気をつけて、目の前の問題をたくさんときこなすプロセスは不可避だと思います(そうかもしれないし、違うという意見があるかもしれません)。みなさんどのようにして数学につきあいましたか?>ALL
福西です。浅野先生、こんにちは。
>等比数列の和の公式を使うことはできるけれども、たまによくわからなくなるという質問を受けました。
もう数列をしているのですね。高校時代、私はこれが「大」の苦手でした。というのも、問題のバリエーションがすごく多く感じられたからです。やっと一つの問題を理解して「よし次!」と思った矢先に、今度はまったく別の解き方を要求される問題が出てきて、混乱することがしばしばありました。いくらパターンが多いといってもそれは有限で、いつかは「全体」を見渡せるようになるはずなのですが、それまでの辛抱が現役の時に私にはできなかったです…。(英語の単語や熟語を覚える作業もそうだと思いますが、同じ理由でそれもまた苦手でした…^^;)。
そんな自分でも、つまった時にちょっと(ちょっとでいいと思います)、だれかがそばで補助してくれたら、またやる気が湧いてきたんだろうな…と今となってはつくづく思います。(だから、浅野先生に見てもらっている高校生はうらやましいです^^) しかもKさんのように、「自分がどこがわからないかをはっきりとさせてから質問をして」くれれば、まさに鬼に金棒ですね。
>それを公比倍すると
これも高校時代、教科書にさらっとS-rSによる導出に書いてあって、「こんなの思いつくわけがない…!」と面食らうとともに憤った記憶があります^^; 今思うと自分がずぼらなだけで、憤る前にちゃんと手も動かして確かめるなり、または(そのやり方に抵抗するのであれば)別の方法を探せばよかったのですが…。その時の私にはどうしても無理な壁だと思えてしまいました。
そこで、今だったらできるかも…と思って、ちょっと手を動かしてみました。
n
Σa・r^(k-1) = a(r^n-1)/(r-1)
k=1
(これのr=2の場合が、上の浅野先生の問題にあたります)
これを、n=0の時、n=1の時、n=2の時…と計算できるところから順番に確かめてみました。すると、
n=0… a
n=1… a・r
n=2… a・r+a =a(r+1)
n=3… a・r^2+a・r+a =a(r^2+r+1)
n=4… a・r^3+a・r^2+a・r+a=a(r^3+r^2+r+1)
となり、ここまで来ると、aでくくって、( )の中がどんどんべき乗が足されていくことがピンときました。そして、高校1年の時に散々させられた、
x^n-1=(x-1)(x^(n-1)+x^(n-2)+…+x+1)
を思い出すと(これがもしかして、S-rSをする原因でしょうか)、
S=a(r^(n+1)-1)/(r-1)
が導けました。自分では「おーな~んだ、こうやってもできるや~ん」と思ったのですが、どうでしょうか?(^^)
すみません、nとかkとか添え字をいじっているうちに、あちこち間違えてしまいました…–;。
以下のようにするのが正しいです。すみません。
(誤)
n=0の時、n=1の時、n=2
↓(正)
n=1の時、n=2の時、n=3
n=1… a
n=2… a・r+a =a(r+1)
n=3… a・r^2+a・r+a =a(r^2+r+1)
n=4… a・r^3+a・r^2+a・r+a=a(r^3+r^2+r+1)
(しかもこれも相当項を書きまちがえてました^^;)
S=a(r^n-1)/(r-1)
福西先生、発展的なコメントをしていただきありがとうございます。
ご指摘いただいた因数分解を利用する導き方は思いつきませんでした。これは因数定理のよい復習になりますね。
因数定理とは、xを含むある整式をP(x)とおくとP(α)=0⇔整式P(x)は(x-α)で割り切れる(つまり因数分解できる)というものです。厳密な証明は省きますが、P(x)=(x-α)×Q(x)+Rと書くとわかりやすいです(Q(x)はある整式、RはP(x)を(x-α)で割ったときの余り)。
今、x^n-1を因数分解したいとします。nに具体的な数値を入れてみましょう。
x^2-1=(x-1)(x+1)
x^3-1=(x-1)(x^2+x+1)
x^4-1=(x-1)(x^3+x^2+x+1)
となります。x^n-1をP(x)とおくと、nの値によらずP(x)=0となります。つまり、(x-1)で因数分解できるということです。あとは組立除法でも使ってP(x)を(x-1)で割ってみれば商を求めることができます。すると、
x^n-1=(x-1)(x^(n-1)+x^(n-2)+…x+1)
と福西先生が書かれていた式になります。
等比数列の和に関して必要なのは
1+r+r^2+…r^(n-1)
です。これを逆から書いてrをxと読むと、先ほど因数分解をした式の右辺の右側の式と同じになります。よって因数分解をした式のxをrと読み替えて両辺を(r-1)で割ると、
1+r+r^2+…r^(n-1)=r^n-1/(r-1)
となり、あとはa(初項)倍してやると等比数列の和の公式のできあがりです。
公式を教科書とは別のやり方で証明するのは楽しいです。そして力がつくこと請け合いです。
有意義なご指摘をどうもありがとうございました。
浅野先生、福西です。
先生のきめ細かさには、本当に頭が下がります。
>1+r+r^2+…r^(n-1)=r^n-1/(r-1)
>となり、あとはa(初項)倍してやると等比数列の和の公式のできあがりです。
>公式を教科書とは別のやり方で証明するのは楽しいです。そして力がつくこと請け合いです。
そうですよね! しかもこの式は、微分積分(無限等比級数のところ)でも、再度出てくるので、
これを自分の手で導出しておけば、「二度おいしい!」と思います(笑)。
1+r+r^2+…r^(n-1)+…=-1/(r-1) ,|r|<1
このように、出来上がった最後の式を見て、なんでだろう? 思ったら、手を動かしてみると、
その意味(必然)が分かって、次からは「使わされる」のではなく、「使える」ようになるのだと
思います。そうすると、数学って面白いなあと、思えるようになるのかなあ…と(^^)