西洋古典を読む(2022/9/21,9/28)その2

福西です。(その1)の続きです。

二つ目の気になった表現は、以下です。ちょうど先の個所(rex Iuppiter omnibus idem)と連続しています。

10.113

fata viam invenient.

運命は(fata)道を(viam)見出すだろう(invenient)。

未来形であること、それがユピテルの発言であることも、注目ポイントです。

この表現は、『アエネーイス』3巻にもありました。

3.395

fata viam invenient

まったく同じです。予言者ヘレーヌスが、アエネーアスに、航海のはなむけとして贈った言葉です。困難のさなかでも運命につき従う(運命のいいとこ取りをしない)トロイア人の敬虔さが強調されます。

また、5巻にも似た表現があります。

5.709

quo fata trahunt retrahuntque sequamur

運命が(fata)連れ出し(trahunt)、連れ戻す(retrahunt)ところに(quo)我らは従おう(sequamur)。

これはナウテースという年長者の言葉です。これも、敬虔なアエネーアスを励ます文脈であらわれます。

10巻のユピテルの言葉は、それらを思い出させる仕掛けとなっています。