福西です。
『リンゴ畑のマーティン・ピピン』(エリナー・ファージョン、石井桃子訳)を読んでいます。
第4話の受講生の要約です。
第4話 『オープン・ウィンキンズ』
要約/Y.M.
庭師ホブは、週の五日をアルフリストンの庭で働き、六日目を領主に費やし、そして七日目を遠くの丘のむすめのためにとっている。そのひとりむすめは、金色の完全なバラをつくることに精進して、父の助けを借りることなく育てている。父・ホブは、自分は一度だけある女の助けを受けたことがあると言う。むすめが、それは父さんの母親かと聞くが、返事は無かった。
ある日、ホブは、むすめが領主の男にいだかれているのを見て、むすめの心は父と花ではなく恋人に与えられたと知る。そしてバラは完全に、金色に輝いていた。ホブは、二人の最初の息子を〝ホブ〟と名付けることを条件に、結婚を許した。二人はゆるい条件に笑ったが、ホブは笑わなかった。
こうして、若い領主とむすめは、結婚し、最初の息子にホブと名付けた。次に、アンブローズ、ヘリオット、ヒュー、ライオネル、と五人の息子が生まれた。領主は、どの子も同じように愛したので、時がたてば、五人の領主が生まれた。
ある嵐の夜、五人は外の風に耳を澄ました。その音は魔女のようだ、とホブは言う。それから、一人ずつ願い事を話す。しかし、ホブだけは秘密にしていた。それは、「金色のバラをつくること」だった。
翌朝、兄弟たちはライオネルがいないことに気づく。丘中を探しまわっても見つからず、遂にヒューが、ライオネルを思い、領地を出る。途中、池に帽子を落とし、拾おうとすると、老人の頭が現れた。その者は、ジェリーと名のり、帽子を返してほしいのなら、風の住んでいるところへもらいに行くと良いと言った。そして、ヒューが二度目で、ライオネルも帽子を落としていったと分かる。しかし、ライオネルは、帽子ではなく、欲しいと願ったおもちゃの農場を選び、『ハルカナムコウ』へ行ったと知り、ヒューはそこへ向かった。
残りの兄弟たちは、ヒューまで居なくなり悲しむが、ライオネルが彼の誕生日に帰ってくる。ライオネルは、おもちゃの農場で遊んでいて、彼の幸福さは無くなっていた。ホブは何も話さないライオネルが、シャツを着ていないことに気づく。
その後、ヘリオットがヒューを探しに、領地を出る。しかし、約束の日になっても、帰ってこなかった。残りの兄弟はヘリオットまで居なくなり仰天するが、ヒューが彼の誕生日に帰ってくる。ヒューは願った白いライオンと紅バラ色のライオンの近くでふるえていて、彼の勇敢さは無くなっていた。そしてライオネルと同様、シャツを着ていなかった。ホブの金色のバラはうまく育っていなかった。
その後、アンブローズがヘリオットを探しに領地を出て、ホブが一人残った。しかし、ヘリオットが彼の誕生日に帰ってくる。ヘリオットは、願ったクジャクの群れのそばにいたが、彼の優雅さはなくなっていた。そしてシャツを着ていなった。帰ってきた三人に何があったのか、三人の間では全て分かり合っているとホブは感じた。
ホブはアンブローズを彼の誕生日まで待ち、谷で見つける。しかしアンブローズは正気を失い、彼の知識は無くなっていた。この災いを、弟たちは語ることができず、ホブは想像することができなかった。そして、弟たちと同じ道を行くことにする。やっと「ハルカナムコウ」まで辿り着くが、四つの風に望みを聞かれ、「金色のバラ」と答えてしまう。
ホブが再び目をあけると、金色に包まれ、頭に黒いひもを巻いた女がいた。彼女は横たわるホブの様子に涙を流し、心配する。彼女はこの森にいつまでもいてほしいと言い、その分、ホブの心から求めるものをあげることにする。ホブも同じ気持ちで、彼女はホブの魂の宝を求める。彼女の名はマーガレットといった。そして、ホブの恋人になる。愛すると、全てのことが美しく思われた。
マーガレットから、ここはオープン・ウィンキンズという場所だと教えてもらう。そこでホブは、弟たちのことを思い出す。しかし、マーガレットは、ホブが去ってしまうのではないかという不安を抱き、愛しているか問うた。
そこで、「私にひと月与えてほしい。その月の最後にはホブの望みを叶える。」と約束する。
それから、マーガレットはホブを小屋へつれて行き、自分のことを短く説明した。両親は森で死に、今はししゅうで暮らしをたてている、と。ホブは、様々な植物が描かれたししゅうを見て、「これは誰が教えた魔法か?」と聞くと、マーガレットは「オープン・ウィンキンズが。」と答えた。
ホブは、心の願いである金色のバラについて話した。ホブは、マーガレットの金色の髪に、黒く輝く髪が混じっていることにおどろく。だが、その部分も美しいと伝える。
約束のひと月の間、二人は森から出ず、外の世界に通じる境界には近づかなかった。しかし最後の日、ホブは向こう側にある森のことが気になって聞いた。「その暗い森は紅林で、それ以上は知らない」とマーガレットは答えた。二人はひき返した。
風の吹くその夜、ホブは眠れなかった。「ハルカナムコウ」の記憶とともに疑惑をかきたてたのだ。月は、マーガレットの小屋を照らしていた。ホブはマーガレットを呼んだ。返事は無かった。
ホブがマーガレットの小屋に行くと、彼女はいなかった。けれど、彼女の脱ぎ捨てた服とシャツが置かれていた。ホブが近づいて見ると、そのシャツは、ヘリオットのもので、クジャクのししゅうがされていた。そして、他の弟たちのシャツも見つかった。同様にそれぞれの望むものがししゅうされていた。ホブは恐れのあまり、オープン・ウィンキンズを通り抜けて、紅林に入る。
紅林の月の光もない道をホブはつき進む。すると、くぼ地に出る。くぼ地には、泥の中にたくさんの虫がいるのが分かった。それは月の光によるのではなく、マーガレットから発する光によって分かったのだ。マーガレットの泥水にひたしていた金髪は、リン光の様に辺りを照らしていた。そして、マーガレットはホブに気づく。沈黙の末、ホブは、「明日までに弟たちのシャツのししゅうをはずし、自分の妻となる人への白い服を作ってもらいたい。」と言って、マーガレットに彼女自身(ホブにとって一番大切なもの)を返した。
その夜、ホブが領地に戻ると、元通りになった四人が出迎えてくれた。ホブは涙を流した。ホブは、領地にいなかった間の出来事を、アンブローズと二人だけの秘密にする。
それから庭師ヶ丘に行った。バラの木には、大きな金色の花が咲いていて、黒い小さなヘビもいた。ホブはうれしそうにオープン・ウィンキンズへと駆けていった。
そのころ、マーガレットは約束の仕事を終えるところだった。婚礼の服は美しく、金色のバラが彼女の金髪でししゅうされていた。
ホブは一緒に領地に帰ろうと言う。しかし、マーガレットはかたく断る。そして彼女は、「ハルカナムコウ」で生まれたこと、外から来る者に心から望むものを与えるかわりに、その者の一番良いものを取っていたことを話す。ホブは「しかし愛には代価などない。これから二人でつくり上げていくことができる。」と強く伝えた。
しかし、マーガレットは花よめ衣装をまとうと、息絶えた。
おどろいたホブは、金色のバラに彼女の髪でししゅうされた黒いヘビに気づく。マーガレットはこの衣装をまとう女の死を計画していたのだ。しかしホブは彼女を愛した。ホブはマーガレットの黒い髪の束を引き抜く。すると、マーガレットは目を覚まし、全てを理解する。
二人は黒髪を捨てに紅林に行く。そこで二人が見たのは、水たまりのふちに広がる清らかなムーン・デイジーとさえずる鳥の様子だった。黒髪は水の中で永久に浄化される。
翌日、庭師ヶ丘には一輪の完全なバラが咲いていた。ホブはそれ──彼女のバラ──をマーガレットに贈った。
その後、二人は結婚式を挙げたのだ。
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