西洋古典を読む(2022/9/14)(その1)

福西です。

ウェルギリウス『アエネーイス』(岡道男・高橋宏幸訳、西洋古典叢書)を読んでいます。

9巻の778-818行目(最後)まで、10巻の1-103を読みました。

トゥルヌス単騎の勇壮は、トロイア側の(名もなき者たちの)結束によって、阻まれます。

トゥルヌスは川に飛び込み、トロイア人の砦を脱出します。

ここで読者として素朴に思うのは、もっとトゥルヌスに活躍させてやったらいいのにな、ということです。トゥルヌスが守将のムネーステウスに後れを取るようでは、アエネーアスにはもっと勝てないだろうと、先が読めてしまうからです。

たとえば、アエネーアス不在の際にムネーステウスが討たれるぐらいのピンチが生じれば、後のアエネーアスの登場が有機的につながりそうに思えます。『イーリアス』でいえばヘクトルの活躍を、そしてパトロクロスの死後のアキレウスの活躍を、といった劇的な展開を期待できます。

しかし作者はそうしなかった。地味にトゥルヌスを撤退させています。また、パトロクロスの死にあたるパッラスの死は、10巻まで待つことになります。その点が「なぜだろうな」と思いました。

面白いことに、ユピテルは、この砦をめぐる戦いでのユーノーの助太刀を禁じています

要するに、神がかり的な力を発揮できないまま、トゥルヌスは去ったのでした。

 

(その2)へ続きます。