西洋古典を読む(2022/7/6)

福西です。

ウェルギリウス『アエネーイス』(岡道男・高橋宏幸訳、西洋古典叢書)を読んでいます。

9巻の525-589行目を読みました。

女神らよ、カリオペよ、わたしは願う、わが歌に霊感を吹き込みたまえ。

Vos, o Calliope, precor, aspirate canenti

【直訳】あなたよ(vos)、おお(o)、カッリオペーよ(Calliope)、私は祈る(precor)、歌っている者に(canenti)息を吹き込め(aspirate)。

1巻の冒頭、6巻の冥府行きの前、8巻のラストなどにあったように、詩人がここでも祈りを捧げます。つまり、気合が入った個所です。

トロイア人が守り、イタリア人が攻める攻防戦が繰り広げられます。

まず、イタリア側のトゥルヌスの活躍が描かれます。トゥルヌスを前にした二人の若者。一人は突進し、もう一人は城壁をのぼって逃げようとします。そのどちらもトゥルヌスは倒します。内容的に、1巻のユノの神殿の絵にあった、アキレウスがトロイルスという若者を倒したエピソードを連想します。

今度はイリオネウス(トロイア側)が倒した者の名が列挙されます。

と思うと、またトゥルヌスが倒した者の名が。

かと思うと、今度はカピュス(トロイア側)が。

次いでメーゼンティウス(イタリア側)が。

このように、「だれがだれを倒したか」という活躍が、視点を切り替えて描かれます。戦場の入り乱れる様子が目に浮かびます。

受講生のA君が「『イーリアス』だとターン制という感じです。一方、『アエネーイス』はカメラワークの切り替えが多いですね」と指摘してくれました。

次回、アスカニウスの活躍(初陣)が描かれます。