福西です。
ウェルギリウス『アエネーイス』(岡道男・高橋宏幸訳、西洋古典叢書)を読んでいます。
9巻の272-393行目を読みました。
伝令役を買って出たニーススとエウリュアルスに、アスカニウスが多大な報償を約束をします。
しかし読者は、その報償が裏腹となることを予想します。
エウリュアルスはアスカニウスに、万が一の時には、残された母の面倒を見てほしいと頼みます。
エウリュアルスは、言うと母が止めるだろうから、そうすると自分も辛くなるからだろうからと、母に言わずに任務についたのでした。
それがこの後、母の悲痛な叫び、「わたしを刺し貫け」(figite me、9.493)を生みます。
さて、二人は闇に乗じて、伝令として出発します。援軍を呼ぶために。
敵陣のすきを通り抜けねばならない際、二人は過剰な行動に出ます。
眠りこけているルトゥリー軍の陣屋を必要以上に荒らしまわったのです。
その努力は、当の本人たちにとってみれば「がむしゃら」であり、「不屈」であったでしょう。
一方、相手から見れば、あたかも野獣が人間の農地を荒らすかのような、不正(improbus)な行為だったでしょう。
土地勘にすぐれたウォルケンスの部隊が到着し、二人の行動に気付きます。
逃げる最中、ニーススはエウリュアルスがいないことに気付きます。そしてニーススは、せっかく逃げおおせた道を「すっかり」引き返します。
このくだりは、2巻のクレウーサを失ったアエネーアスの行動を思い出させます。
いつも思うことですが、これが2000年前に書かれた作品だなんて思えないぐらい、プロットが緻密です。『アエネーイス』は面白いですね。