福西です。
『リンゴ畑のマーティン・ピピン』(エリナー・ファージョン、石井桃子訳)を読んでいます。
いよいよ下巻に入り、p9~p14を読みました。
第4話は『オープン・ウィンキンズ』です。不思議なタイトルです。
五人兄弟の領主が登場します。一覧すると、以下の通りです。
長男:ホブ(Hobb) 22才、8/1生、特徴は「特になし」(愛情)
次男:アンブローズ(Ambrose) 19才、7/1生、「賢さ」wisdom
三男:ヘリオット(Heriot) 16才、6/1生、「美」beauty
四男:ヒュー(Hugh) 13才、5/1生、「勇敢さ」bravery
五男:ライオネル(Lionel) 10才、4/1生、「幸福」happiness
そして、長男ホブがこの物語の主人公です。この五人兄弟はとても仲が良く、お互いを大事に思っています。
物語は、五人兄弟の両親のエピソードから引き起こされます。
母は庭師の娘で、文字通り箱入り娘として人知れぬ園にかくまわれ、大事に育てられます。しかし庭師の知らないうちに、若い領主が娘を見初め、付き合うようになります。二人の恋が本物だと知った庭師は、反対することをあきらめます。でも無条件では悔しいので、こう言います。
「最初の子にホブという名前をつけてくれるなら、許そう」と。
この甘々な条件に、二人は喜びます。ホブは庭師の名前でした。二人が、その名を呼ぶたびに、身分の違う恋を選んだことを忘れないようにと。
これが五人兄弟の長男の名前の由来です。
以下の個所が印象的でした。
「たが一度、ひとりの女のことばをうけいれたことがある。その女の助けがなかったら、わしは、わしの育てたうちでいちばんめずらしく、いちばんだいじな花をつくりだすことはできなかった。」(…)
「その女のひとは、おとうさんのおかあさんですか?」とむすめはいった。
けれど、庭師は答えなかった。
「いちばんだいじな花」というのは、おそらく娘のことであり、「ひとりの女」とは、庭師の妻だろうと思われます。娘を恋から遠ざけようとした庭師もまた、かつて恋をし、妻を得たのでした。庭師は、自分の経験に思い当たって、娘の質問に答えられなかったのでしょう。
このエピソードは、作者エリナー・ファージョンの家と重なります。ファージョンの父はイギリスの作家で、アメリカの女優と結婚しました。その時の「冒険」が、ファージョンの自伝に書かれています。また、ファージョンは四人兄弟(ハリー、ネリー、ジョー、バーティ。ネリーがエリナー)で、とても仲が良かったことも書かれています。
『わたしの子供時代』(エリナー・ファージョン、中野節子ら訳、西村書店)