『赤毛のアン』を読む(西洋の児童文学を読むB、2022/5/20)(その1)

福西です。

『赤毛のアン』(モンゴメリ、村岡花子訳、新潮社)を読んでいます。

p21~p29を読みました。アン、登場です。

マシューがブライト・リバー駅へ向かう間、マシューのことが描写されます。一言でいえば、女性を怖がる性格です。

そのマシューが、駅にぽつんと座る女の子にほとんど気付かずに、駅長にたずねます。「汽車はまだか」と。すると、「30分も前に通った」と駅長。それでまた、「スペンサーさんが男の子を置いていったはずだが」と。すると「あの女の子だ。一人前の口を利くよ」と。駅長は、夕飯を食べに早く家に帰りたいので、冗談を言い残して立ち去ります。

マシューは手違いがあったことを知ります。けれどもアンを見た瞬間、自分がどうしたらよいかを決心します。

アンは「もし誰も来なかったら、あの桜の木で一夜を明かそうと思ってたところなの」といった空想を話しはじめます。アンのセリフは長いです。一見、天真爛漫であるように思われますが、それがアン特有の、緊張と不安を隠す方法なのだと、読者はあとで知ることになります。

アンが口上を述べた後、マシューは「遅れてわるかったね」(I’m sorry I was late)とだけ言います。

マシューは恥ずかしがり屋ですが、とても紳士的です。その態度に、アンの将来の明るさを思って、読者もほっとします。

その個所の原文を、『英語で楽しむ赤毛のアン』(モンゴメリ/英文、松本侑子/対訳・解説・写真、the japan times出版)の注釈を見ながら、確認しました。

“I suppose you are Mr. Matthew Cuthbert of Green Gables?” she said in a peculiarly clear, sweet voice. “I’m very glad to see you. (略)

Matthew had taken the scrawny little hand awkwardly in his; then and there he decided what to do. He could not tell this child with the glowing eyes that there had been a mistake; he would take her home and let Marilla do that. She couldn’t be left at Bright River anyhow, no matter what mistake had been made, so all questions and explanations might as well be deferred until he was safely back at Green Gables.

“I’m sorry I was late,” he said shyly.

ちなみに、he was safely back at Green Gablesで、安全にグリーン・ゲーブルズに帰り着く主体が、she(アン)ではなくて、he(マシュー)であることが発見でした。

「アンを無事に送り届けること」ではなくて、「マシューが無事に家に帰りつくこと」と取れます。紳士であるはずのマシューが問題を先延ばしにし、あとで妹に押し付けざるを得ないぐらい、マシューはすっかり女性が苦手なのだと分かります。

日本語訳では主語が隠れてしまっているので、そのあたりのニュアンスが汲み取れて、面白いなと思いました。

 

(その2)へ続きます。