『リンゴ畑のマーティン・ピピン』を読む(西洋の児童文学を読むC、2022/5/19)

福西です。

『リンゴ畑のマーティン・ピピン』(エリナー・ファージョン、石井桃子訳)を読んでいます。

第3話「夢の水車場」の、受講生の要約です。

第3話 夢の水車場

要約/Y.M.

海の近くにある水車場は製粉に使われている。製粉所のむすめ、ヘレンは、世間知らずで、父親と仕事をしている。父親は製粉所と同じで暗かった。母親は死んでいたので、ヘレンは一日中、働かされる。そんなヘレンは、海を見たことがない。上げ潮で海の塩からい味とにおいは知っていたが。

ヘレンの秘密のたのしみは、水車場で世の人は聞かない、石うすの音を聞くことだった。その時、ヘレンの目は星の光になるのだった。

ヘレンが十七のとき、製粉所に若者がおとずれる。若者は口笛をふいてやってき、パンが欲しいと言う。ヘレンは人との会話に慣れていないので、からかわれる。それから、若者にパンと〝小麦の穂〟を渡す。ひもじいときに穀物は役に立つと説明する。若者は船乗りで、ヘレンは興味を持ったが、彼は海へは行かないと知るとがっかりする。ヘレンはお礼に〝貝〟をもらう。すると、若者は口笛をふいて去っていった。

ヘレンは貝をはじめて見る。金色から青緑の波まで見事に描かれている。しかし、貝のしんを見ることはできなかった。そして、そのしんが、ヘレンの心になるのだった。このときから、ヘレンは、貝を心臓にあてるようになる。

ヘレンは、貝とじぶんの夢を織る石うすに聞き耳をたて、妄想する。そこには若者が出てくる。ヘレンの小麦は畑になり、若者の頭の中でさらさら鳴る。若者の貝はヘレンの心臓にささやく。現実より夢の方が真実に近いのである。

時は一年一年たってゆき、ヘレンの若さは無くなっていた。しかし、彼女の心は少女のままだった。

一方、ヘレンの父親の暴虐さは強くなるが、ヘレンは石うすのそばを離れたくないため逃げだすことは望まなかった。そんなヘレンの世界の中で……若者は難破する。水にすいこまれたヘレンの意識はうすれ、「人が愛しあうとき、人々は互いに見つけだし、失うことはない。」と言うが、彼に呼ばれる声を聞きながら沈んでしまう。

ヘレンの父親が死ぬ。ヘレンは、周りの人からは遠い存在として見られるが、子どもたちからは輝いて見える。

それから後に、あらしが起こる。狂う雨と雷が過ぎた三日目の朝、ヘレンは窓にカモメがいるのに気づく。そして、鳥の背越しに初めて海を見る。風は彼女の胸にあたってふるえた。ヘレンは貝を取り、石うすのそばに立つ。しかし、妄想をしても何も聞こえてこない。

ヘレンは水車場を出ると、探し求めていたものを発見する。「かれ」は、気を失っていた。彼はピーターと名のり、ヘレンが分からないほど年を取ったあの若者だった。ピーターもヘレンも二十年前のことを覚えていた。そのときピーターが吹いた口笛を久しぶりに聞く。ヘレンはピーターに近づこうと奮闘する。そして、二人を離す自分の愚かさを打ち砕きたい(もっと素直になりたい)と思う。

再会して三日がたつと、ピーターは回復し、けがをしていたカモメを救う。そして、恋人のようにカモメと遊んだ。ヘレンは、ピーターが鳥と同じように飛んでいってしまうことを不安に思う。そして、彼の優しさがヘレンの心をうちのめす。

ピーターは、「前は戸口で七分間、今度は七日間、一生ここにいるかもしれない」と言い、ヘレンに求婚する。しかし、ヘレンは「死んだ方がまし」と返す。

ヘレンは自分の部屋に走り戻ると、人生の全てのものが奪い去られてしまったように思えた。そのうち、自分に一つだけ残されたあの貝のことを思い出す。そして、ピーターが来てから行っていなかった石うすの所へ行く。石うすはもう夢を語らないと分かり、ヘレンは喪失感でいっぱいになった。

そこで、ピーターがいることに気づく。ピーターはミイラになった小麦の穂を見せる。しかしヘレンは貝と小麦を石うすに投げ捨ててしまう。そして、夢の中で夢と別れようとする

そんなヘレンをピーターはだきしめた。貝と小麦をはさんで互いの夢は二人の真実へとつながる。そうして、ヘレンをつよく真実に引き戻したピーターは、はじめてキスをする。ヘレンの髪はやわらかく、ピーターの目は二十歳の若者の灰緑色だった。

Mさんは毎週、読み終わった箇所について短く要約しています。それを最後につなぎ合わせて、上の要約を作りました。コツコツと努力できることを、すごいなと感心します。つぎの第4話「オープン・ウィンキンズ」の要約も楽しみにしています。

以前のMさんの要約はこちらです。

第1話「王さまの納屋」

第2話「若ジェラード」