西洋古典を読む(2022/4/20)

福西です。

春学期初回のこの日は、ひさびさの対面授業でした。

A君が春休みの間に読んだ本のことを話してくれました。とくに「ロシアの動乱時代」という、リューリク朝からロマノフ朝へ移る王位継承問題についてレクチャーしてくれました。

偽ドミートリー2世という人物がいるそうです。それは、ドミートリー2世の偽物ではなくて、「偽ドミートリー1世の偽物」だというから、驚きです。「偽ドミートリー1世が生きていた!」と。

そして偽ドミートリー1世は、ドミートリー1世の偽物(「ドミートリー1世が生きていた!」)。

偽というのは、実名が分からないからそう呼ばれている(ステンカ・ラージンの乱やプガチョフの乱でさえ、その名が残っているのに)とのことです。

さて、話をややこしくしたのは、ドミートリー1世の実母が「本物だ!」と認めたことです。それで、それまで半信半疑だったポーランド・リトアニアが本腰を入れて後押し。しかし、ロシア貴族が反発。偽ドミートリー1世は戴冠式でロシア貴族たちに惨殺されます。その後現れた偽ドミートリー2世も、最後は部下に殺されます。そして混迷の挙句、ロシア貴族たちは、リューリク朝の血筋でないところから「え?」という人物を擁立します。それがミハイル・ロマノフというわけです。

リューリク朝のお家断絶を必死に防ごうとして、「偽」の存在が現れ、そのたびに信じられて動乱となる。その動乱が、王朝の存続をあきらめたことで収まったと。

「あれほどまで信じきり、最後はその信じていたものをころっと捨てる。極端から極端へというのが、ロシアらしいです」

という、A君の感想が興味深かったです。

またA君が、「昔読んだ本を読み返すと、当時の自分と対話しているような気がする」と話してくれたことが印象的でした。