虚数が「存在しない」と思われている理由

入角です。先日の高2数学で複素数平面を勉強していたところ、生徒さんから「虚数は存在するのか」という質問をいただきました。

その答えは「存在する」の意味次第かと思いますので、ここでは保留にしておきます。ただ、虚数に「存在しない数」というイメージがあるのは、おそらく、数のことを「大きさや量を表すもの」だと捉えているからではないかと思います。

虚数は実数直線上には現れず、複素数平面上に位置します。そのため、虚数同士に大小関係を言うことができません。

このことは計算でも確かめられます。2iとiのどちらが大きいかを考えてみます。

2i>iだとすると、

i>0

両辺二乗して、

-1>0

これは矛盾です。

逆に、2i<iとしてみると、

i<0

両辺二乗して、

-1>0

やはり矛盾です。2iとiは、どちらが大きいとしても、矛盾が生じるのです(当然、2i=iとしても矛盾します)。

数というものを、「大きさを測定するもの」と考えている限りでは、大小関係を言えない虚数は「存在しない」ように見えると思います。すなわち、虚数という概念を受け入れるためには、数に対するそうしたイメージを払拭する必要があります。

確かに、初期の数学は、大きさの計量を主目的として生まれたのかもしれません。しかし、ピタゴラスの定理の正しさにとってピタゴラスの意図が関係ないように、そうした「出自」に縛られないのが数学らしさだと私は思います。