2022-03-14 地上の生に関して(スキーピオーの夢)

山下です。
「スキーピオーの夢」15節にて、小スキーピオーは宇宙のとある場所(銀河)から地球を眺め、「宇宙の生が真のものであるなら、なぜ自分は急いで地上を去り、ここに来ないのか」と問います。

人間に魂を授けた神の命令なしに、言い換えると地上でmunus(義務)を果たし終えるまでは、自分で生を断つことは許されないことが示されたのち、次の表現が続きます。

(16) Sed sīc Scīpiō ut avus hic tuus, ut ego quī tē genuī, iūstitiam cole et pietātem, quae cum magna in parentibus et propinquīs, tum in patriā maxima est;

しかし、スキーピオーよ、ここにいるおまえの祖父のように、おまえを生んだわたしのように、正義と義務を重んじよ。それは親と近親者に対して大切であるばかりか、祖国に対してもっとも大切なものである。

日本語で正義や義務という言葉は決め台詞とは言えないでしょうが、2千年前のローマ人の胸に、justitia(正義)とpietas(義務)は重く響きます。

英語に、それぞれjusticeとpietyとして入っていますが、英語に関しても、ラテン語ほどの重みがあるかは不明です。

ウェルギリウスの「アエネーイス」のおいても、この二つの言葉は「勇気」を表すvirtusとともにキーワードになっています。