山びこ通信2021年度号(2022年2月発行)より下記の記事を転載致します。
『現代世界史』
担当 吉川弘晃
この授業では、19世紀後半以降の「現代世界史」を最近の歴史研究(主に読みやすい新書)を通じて学んでいきます。この20年間、特にIT技術の飛躍的な発展が政治・経済・文化、その他多くの局面で「世界の一体化」を推し進め、その起源は16世紀(大航海時代)や14世紀(モンゴル世界帝国)と諸説あります。しかし、ヨーロッパで確立した諸制度(資本主義・近代国家・衛生・大学・鉄道…)がその他の各地域へ拡大していくという意味で、「世界の一体化」が決定的な潮流となるのは19世紀半ば以降です。とはいえ、そうした過程でアジアやアフリカの各地域から、「西洋化」に対する自律的な反応(受容・反発・変容)が見られたのも(特に20世紀以降は)忘れてはなりません。世界が激しい流れのなかで一体化していく歴史、すなわち「現代世界史」について、講師と受講生が一緒にテーマを決めて学んでいきます。
春学期は、主に「現代世界史」を学ぶために必要な概念や理論(資本主義・ナショナリズム・歴史哲学・近代化・文化理論など)を、秋・冬学期はより具体的かつ実践的な歴史(日本及びそれ以外の地域にまたがる近現代史)を扱います。参考までに2021年度に用いた教科書を挙げておきます。
春学期:柄谷行人『世界共和国へ』岩波書店、2006年
秋学期:三谷太一郎『日本の近代とは何であったか』岩波書店、2017年
冬学期:中野耕太郎『20世紀アメリカの夢』岩波書店、2019年
以上のように選んだテキストをもとに、①「現代世界史」を巨視的に眺めるための道具を用意した上で、②「現代世界史」をめぐる問題について私たちの住む日本という地域から考えるとともに、③他の地域の事例を比較・検討することで、日本の事例を相対化していくこと、を目指しています。
この授業は開講したばかりなので、試行錯誤を続けておりますが、上記に関わるもので何か読みたい本や扱ってほしいテーマがあれば、お気軽に教室までお問い合わせくだされば幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。