山びこ通信2021年度号(2022年2月発行)より下記の記事を転載致します。
『イタリア語入門』『イタリア語講読』
担当 柱本 元彦
現在受講生は二名、対面とリモートに分かれていて、それなりに慣れてはきましたが、いろいろと至らないところもあり申しわけなく思っています。授業のほうは秋学期の前半は息抜き?にレオパルディの詩を読みました。後半からは本道の散文に戻り(こちらの方が息抜きのようですが)、五年ほど前にもとりあげたナポリの作家、ラッファエーレ・ラ・カプリアの『四つの愛の物語 4 storie d’amore』を読んでいます。前回は二つの物語で切り上げたのですが今回は四つとも読もうと思います。今年百歳のラ・カプリアはいまだ現役(おそらく)、文学賞のキャリア部門を総なめにしている大長老です。昔から戯曲の翻訳を多く手がけ、映画脚本家としても有名で(日本でもよく知られている作品にロージ監督の『エボリ』があります)少し毛色が変わっています。四十歳頃に難解な長編”Ferito a morte”(ストレーガ賞受賞)を発表した頃は、イタリアのジョイスと呼ばれていました。この『四つの愛の物語』という物語的エッセーは八十五歳のときの文章です。ラ・カプリアは永遠に失われた過去のナポリを長らく嘆いていましたが、年を経てどうやら自在の境地に達したらしく、戯れるがごとく気のおもむくまま書き散らしているようです。イラスト作家とのコラボ本になっていて易しく読めますが、それなりに味わいがあり(クセがあり)講読初級のテクストとしては手頃なものでしょう。でも易しいはずなのに鋭い質問が向けられるとしばし思い悩み、講師があらためて学ぶところもあるのです(テクストのおかげというよりは受講生のおかげですね)。