福西です。
『ぬすまれた夢』(ジョーン・エイキン、井辻朱美訳、くもん出版)を読んでいます。
最終話、「ことばをひとつ」を読みました。
内容は「改心もの」です。
言葉づかいのきたない少年ダンが、魔法使いの老婆をののしったせいで、「きたない言葉を使うたびに皮膚がガラスになる」という罰を受けます。
この変化を恥じたダンは、人里離れた山にこもり、羊飼いとしてひっそり暮らします。
そして、静寂の環境が、ダンを沈黙の賢者へと作り変えます。
ある騎士がダンのもとへやってきます。彼は竜退治の助言を求め、ダンはつぎの6ワードの言葉を教えます。
ドラゴンは・綱で・しばられ・人は・ことばで・しばられる
これによって、竜退治は成功し、ダンは騎士から感謝されます。
そこへ以前の老婆がやってきて、呪いを解くための言葉を見つけたかどうか、ダンにたずねます。
ダンは答えます。
木は・風に・動かされ・人は・ことばに・動かされる
老婆は「その通り」と言って、ダンを許します。
その後も、ダンは、雷や鳥の言葉を理解しては、
「ことばは一度にひとつでいい」
と言い、満足した暮らしを送りました。
これで『ぬすまれた夢』の短編はすべて読み終えました。受講生のみなさん、読了、おめでとうございます!
次のテキストは、『海の王国』(エイキン、猪熊葉子訳、岩波書店)です。
このクラスで読む、エイキンの三冊目です。お楽しみに。
【補足】
これまで読んだ短編のパターンを整理しておきます。
(ぬ…『ぬすまれた夢』、し…『しずくの首飾り』)
1 徳を持った主人公(1)
徳ゆえに超常的な存在から幸せのアイテムを得る→悪徳を持った人物によってアイテムを盗まれる→冒険する(取り返す)→幸せがもっと幸せになる
(ぬ)「ぬすまれた夢」「鍵のかたちをした葉っぱ」
(し)「しずくの首飾り」「足ふきの上にすわった猫」「魔法のかけぶとん」
2 徳を持った主人公(2)
無意識に悪いことをしてしまう→超常的な存在からペナルティを受ける→受難(克服)→徳がもっと多くなり、幸せになる
(ぬ)「さけぶ髪の毛」
3 悪徳を持った主人公(1)
意識的に悪いことをしてしまう→超常的な存在からペナルティを受ける→改心(克服)→徳が悪徳よりも多くなり、幸せになる
(ぬ)「探しもの─足をひと組」「ことばをひとつ」
4 悪徳を持った主人公(2)
意識的に悪いことをしてしまう→超常的な力を乱用する→改心しない→悪徳が徳よりも多くなり、不幸になる
(ぬ)「おふろの中のクモ」
5 願いを持った主人公
手に入れたい幸せがある→手に入れようとして苦労する→別の形で幸せになる
(ぬ)「虹の最後のかけら」「女の子を愛した木」「世界一の画家」
(し)「空のかけらをいれてやいたパイ」「ジャネットはだれとあそんだか」「パン屋のネコ」「三人の旅人たち」「たまごからかえった家」
つぎはどんなお話でしょうか?