福西です。
『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス、高杉一郎訳、岩波書店)を読んでいます。
20「天使のことば」を読みました。
トムは、雪の庭園でハティと会います。この物語で初めての冬の場面です。
ハティは大人びて社交的になり、スケートの練習を楽しんでいます。ハティは、トムにひさしぶりという趣旨のことを言いますが、トムは「毎日来ている」と否定します。またトムの姿が前より透けてきたことも指摘されますが、これも認めません。トムの心の現実が崩れてきているのです。
トムは大時計の絵を見るという約束を実行するよう、ハティにしつこく迫ります。ハティはしかたなくスケートを中断して、大時計の鍵を開けます。このあたりのトムの様子は、まるで頑固な妖精みたいです。
二人は、天使の絵の出典が黙示録の第10章1~6節であることをつきとめ、アベルの聖書を借りてその個所を確認します。
わたしは、もうひとりの力づよい天使が、雲につつまれて天から降ってくるのを見た。頭には虹をいただき、顔は太陽のようで、足は火の柱のようであり、手にはひらかれた小さな巻物をもっていた。そして、右足で海を、左足で地を踏まえて、獅子がほえるような大声でさけんだ。天使がさけんだとき、七つの雷がそれぞれの声で語った。七つの雷が語ったとき、わたしはそれを書きとめようとした。すると、天から声があって、
「七つの雷が語ったことは秘めておけ。それを書きとめるな。」というのが聞こえた。
すると、海と地の上に立つのをわたしが見たあの天使が、右手を天にあげ、天とそのなかにあるもの、地とそのなかにあるもの、海とそのなかにあるものをつくり、世々かぎりなく生きておられるかたにかけて誓った。
「もう時がない。」
トムは、「もう時がない」という句にとらわれます。ハティにスケートに誘われても、「いやだ。ぼくは考えることがあるんだ」と、寝室で「時」のことを考え続けます。
一途さゆえにわがままととられかねない、トムのせっぱつまった様子が、読者の胸を打ちます。
受講生の要約です。
H.Aさん
トムがドアを開けると庭園の季節は冬で、ハティはスケートをしていた。彼女は「トムがうすくなった」、「約束したのはずっと昔の話」だという。
トムはハティに大時計のとめがねをはずしてもらい、しるされた文字を読む。
その後、アベルの辞書で細かいことを確認し、トムは「もう時がない」という一文が鍵と思う。