福西です。
『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス、高杉一郎訳、岩波書店)を読んでいます。
18「窓に横木が二本わたしてある寝室」を読みました。
ジェームズとおばさんの話を立ち聞きした後、トムはやっと、ハティの寝室を見つけます。
途中、大時計を見たからかもしれません。トムはこの時になって、ハティが大人になりかけている女性であることを、ようやく認めます。ずっと妹か同い年だと思って遊んでいたトムにとって、ハティが大人になることは、認めたくない現実です。トムの心の作用が、時間の流れに逆らって、ハティをいつまでも子供のように見せかけていたのでした。
大人びたハティは、一枚の写真を見せます。
「これが、わたしのおかあさんとおとうさん。ずっとむかしのものよ。トム、おぼえてて? いつか、わたし、おとうさんとおかあさんは王さまと女王さまだって、うそをいったことがあったでしょ。」
このように、ハティの話しぶりは落ち着いており、木から落ちる前の(トムに思い描かれていた)ハティとは似ても似つきません。ハティがトムに対して「なつかしい人」のように距離を置いて話すことに、トムはさびしさを覚えます。
トムは「過去」のことを考えていた。「時」がそんなにも遠くへおしやってしまった「過去」のことを考えていた。
夜中の十三時になると庭園に行けるという不思議は、もう終わろうとしている──トムは無意識に、一刻の猶予もないと感じます。
トムはハティに、大時計の鍵を開けて、中の天使の絵を見せてもらうことを約束します。庭園に行けるからくりを解いて、「いつでも庭園に行けるようになる」ために。
受講生の要約です。
H.Aさん
ハティに、ドアを通りぬけるところを見せてやったトムは、彼女が以前より大人になったことに初めて気付く。また、彼女の寝室にも窓に横木が二本わたしてあるということにも気付く。
時について思いをはせたトムは、大時計の絵の意味をハティに尋ね、ハティは秘密を探ると約束をする。
I.Uさん
トムはハティの部屋へ行き、ハティと話をした。
トムはハティが大人になったような気がしたり、ハティの部屋を見たことがあるような気がした。
トムは大時計を思い出し、ハティに大時計の中の絵の意味を聞く。するとハティは聖書の中の話と答えたが、内容をわすれ、今度大時計のふりこのケースのかぎを開けると約束してくれた。しばらく話をした後、トムは帰ろうとするが帰れず、結局ハティに話をきくことにした。けれどハティはもうねていてトムも知らぬまにハティの部屋でねていた。朝おきると元の自分のしん室にもどっていた。
S.C君
トムはハティの寝室へ入る。寝室の窓には横木が二本わたしてあった。トムはそれに、見覚えがあった。トムはハティに大時計の絵について聞く。トムは自分で見にいこうとするが、ハティは、かぎは大時計の中で、おばさんしかつかえないという。トムはハティの部屋でねる。気がつくと自分の部屋にいた。