福西です。
『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス、高杉一郎訳、岩波書店)を読んでいます。
15「塀の上からの眺め」を読みました。
トムとハティは木登りに夢中になります。最後まで残った「油断大敵」に登ることについに成功します。ハティはうれしくてたまりません。
つぎに、トムは鳥の巣を確かめようと、塀の上にのぼります。
「おお、トム!」
ハティのその「おお、トム!」といういいかたが、トムにはとてもあたたかく、そしてやさしく感じられた。
作中での「おお」という感嘆は、トムが1回発するほか、残りはすべてハティが発します。
このことは、6章でモミの木が雷に打たれた際に聞こえた、<「おお!」というような人間のさけび声>が、だれのものであるかのヒントになっています。
「トム、庭園のむこうの方にはなにが見えるの?」
ハティはトムに壁の下からせがみます。庭園は、ハティの王国であり、その中にいる限り彼女は安全です。その一方で、庭園は彼女の成長をとめる原因でもあります。
トムはハティの望み通り、彼女の目となり、川が見えることを説明します。
ところが、二人の様子に気付いた園丁のアベルが血相を変えて飛んできます。アベルは、トムのことを悪魔だと思っています。その悪魔がハティをそそのかして、壁を登らせ、飛び降り自殺をさせるのではないかと心配したのでした。
アベルはハティに聖書の上に手を乗せて、決して壁に登らないことを誓わせます。
この出来事は、ガチョウの事件のときと同様、読者に不吉な予感を与えます。
そしてアベルの心配は、次の章で現実となるのでした。
受講生の要約です。
H.Aさん
トムとハティは、木登りをしたり、小鳥をからかったり、かと思えば守ったりして遊ぶ。ある時、ジェームズがエドガーにけしかけられて登って、兄に怒られた高い塀に、トムは登りたくなる。塀の上のトムは、景色をたんのうする。ハティがトムを見上げていると、急にアベルがやってきて、ハティに塀の上に登らないことを誓わせる。アベルは怖がっているようだった。トムは彼の不思議な行動に不安をおぼえる。
S.C君
トムは庭園でハティと遊ぶ。以前ジェームズが登った塀の上に登る。トムは、庭園の向こう側の景色を眺める。その時ハティのところにアベルが来た。アベルは何かに恐れていた。