『トムは真夜中の庭で』を読む(西洋の児童文学を読むB、2021/12/3)

福西です。

『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス、高杉一郎訳、岩波書店)を読んでいます。

15「塀の上からの眺め」を読みました。

トムとハティは木登りに夢中になります。最後まで残った「油断大敵」に登ることについに成功します。ハティはうれしくてたまりません。

つぎに、トムは鳥の巣を確かめようと、塀の上にのぼります。

「おお、トム!」

ハティのその「おお、トム!」といういいかたが、トムにはとてもあたたかく、そしてやさしく感じられた。

作中での「おお」という感嘆は、トムが1回発するほか、残りはすべてハティが発します。

このことは、6章でモミの木が雷に打たれた際に聞こえた、<「おお!」というような人間のさけび声>が、だれのものであるかのヒントになっています。

 

「トム、庭園のむこうの方にはなにが見えるの?」

ハティはトムに壁の下からせがみます。庭園は、ハティの王国であり、その中にいる限り彼女は安全です。その一方で、庭園は彼女の成長をとめる原因でもあります。

トムはハティの望み通り、彼女の目となり、川が見えることを説明します。

ところが、二人の様子に気付いた園丁のアベルが血相を変えて飛んできます。アベルは、トムのことを悪魔だと思っています。その悪魔がハティをそそのかして、壁を登らせ、飛び降り自殺をさせるのではないかと心配したのでした。

アベルはハティに聖書の上に手を乗せて、決して壁に登らないことを誓わせます。

この出来事は、ガチョウの事件のときと同様、読者に不吉な予感を与えます。

そしてアベルの心配は、次の章で現実となるのでした。

 

受講生の要約です。

H.Aさん

トムとハティは、木登りをしたり、小鳥をからかったり、かと思えば守ったりして遊ぶ。ある時、ジェームズがエドガーにけしかけられて登って、兄に怒られた高い塀に、トムは登りたくなる。塀の上のトムは、景色をたんのうする。ハティがトムを見上げていると、急にアベルがやってきて、ハティに塀の上に登らないことを誓わせる。アベルは怖がっているようだった。トムは彼の不思議な行動に不安をおぼえる。

S.C君

トムは庭園でハティと遊ぶ。以前ジェームズが登った塀の上に登る。トムは、庭園の向こう側の景色を眺める。その時ハティのところにアベルが来た。アベルは何かに恐れていた。