福西です。
『びりっかすの神さま』(岡田淳、偕成社)を読んでいます。
「11 最後のひとり」「12 一番はうれしいか」を読みました。
みんなは「よおし。全員10点をとるぞ」と意気込みます。
──久しぶりだなあ、10点は。
これは正紀の声です。
全員、最低点=最高点の10点をとりました。これで、全員びりっかすが見えるはずです。
ところが英子にだけは、見えません。びりっかすがいるという話を信じようとしないからでした。
「まぼろしよ。そんなの。見えると思うから見えるのよ!」
そんな英子をとりまいて、英子以外の全員が、「心の中のおしゃべり」で話し合います。その雰囲気にプレッシャーをかけられ、英子は泣き出します。
次の小テストの時間、英子はぼうっとしています。鉛筆が動かず、このままでは0点。彼女だけがびりになってしまいます。
ここで、みんなはそれぞれの意思で、0点を取ることを決意します。
──うそ! うそ! 信じないわ!
英子の心の中の声がみんなに聞こえました。それで、彼女にもびりっかすが見えたことが知れました。
次の日。全員が0点をとったことがショックだったのかどうかは分かりませんが、市田先生は学校を休みます。
ちょうど運動会の前日で、明日に向けての練習がありました。
みんなは心の声を使って、明日のリレーについて議論します。ハンディキャップのある子にわざと負けるべきかどうか、わざと花を持たされた相手はうれしいかどうか、一生懸命走って勝った時に、素直に喜んでいいのかどうか。びりっかすが見えなくなってもいいのかどうか。
──わかんなくなっちゃったよ。
だれかがそういった。始もおなじ気持ちだった。
ここで主人公の悟が模範的な回答を示さないことが、この作品のいいところだと思います。
悟は、びりっかすにもたずねます。
──本気で、走れよ。
いつもじょうだんみたいなしゃべりかたをするびりっかすが、いやにまじめに、やさしくいった。
次回、最終章です。