高校・数の世界

2/28の授業

A君が、学校で、数学の先生から教えてもらったという「シュワルツの不等式」の証明を教えてくれました。それは以下のように「二次方程式の判別式と似ている」というアイデアから出発するもので、私もなるほどと思いました。(以下は彼の説明で私が憶えていた部分から再現したものです)

シュワルツの不等式
(ax+by+cz)^2≦(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2) の証明 (ただしa,b,c,x,y,zは実数)

(注:^2は「二乗」の意味)

与式(左辺)-(右辺)=Aとおき、A≦0を示す。

すなわちA=(ax+by+cz)^2 -(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)≦0を示すわけであるが、これは二次方程式s=pt^2+2qt+rの判別式D=q^2-pr≦0とよく似ている。

そこで、p=a^2+b^2+c^2、q=ax+by+cz、r=x^2+y^2+z^2とおいて、
それらを係数に持つ実数tの二次方程式
s(t) = (a^2+b^2+c^2) t^2+2(ax+by+cz)t+(x^2+y^2+z^2)
を考える。

そしてs(t)について式を変形して調べると、
s(t) =t^2 (a^2+b^2+c^2)+(x^2+2tax)+(y^2+2tby)+(z^2+2tcz)
=t^2(a^2+b^2+c^2)+(x+ta)^2+(y+tb)^2+(z+tc)^2 -t^2 (a^2+b^2+c^2)
=(x+ta)^2+(y+tb)^2+(z+tc)^2≧0
である。

よって、任意の実数tについてs(t)≧0が成り立つ。ゆえに
s(t)≧0 ⇔ s(t)の判別式D≦0 ⇔ A≦0となり、与式が示せた。(Q.E.D.)

これ以外にも二つのベクトルをa=[a b c]′,x=[x y z]′とし、内積を使って(a+tx,a+tx)≧0からtの二次方程式を作る証明があるのですが、しかし上のA君が学校の先生から教わってきた証明だと内積を知らない段階でも理解でき、かつ(a_1x_1+a_2x_2+…+a_nx_n)^2≦(a_1^2+a_2^2+…+a_n^2)( x_1^2+x_2^2+…+x_n^2)とn次元に拡張しても、s(t)=t^2Σa_i+2tΣa_ix_i+Σx_i^2とすれば、ベクトル同様「計算量が増えない」というメリットがあります。そのことをA君が「中学生でも分かる方法だったので」と感心して伝えてくれた事に、私もまた感心したのでした。

ちなみにΣで書くともっとすっきりして、Σxyは相互相関、Σxxは自己相関という、統計学的な意味も出てきます。