2022-01-29 死は確実、時は不確実

山下です。
ラテン語表現を紹介します。

Mors certa, hōra incerta.  死は確実、時は不確実

今も欧米の墓碑銘に刻まれる言葉です。省略が行われ、ちょっと謎かけのように見えます。

前半は「死は確実に訪れる」と理解できますが、後半の「時は不確実」とはどういうことでしょうか。時とは「死の時」のことです。そう考えると、「死ぬことは確実。それがいつかは不確実。だから今を精一杯生きよ」というメッセージが聞こえてきます。

墓碑銘にはいろいろな言葉が刻まれます。「今日は私に、明日はあなたに」(Hodiē mihi, crās tibi.)という言葉もあります。主語に 「死」を補ってみてください。「今日は私に、明日はあなたに死が訪れる」という意味になります。この文の「私」とは「死者」のことです。死者から現世を生きる人間へのメッセージというのが、墓碑銘に見られる定番の一つです。

「私はあなたであった。あなたは私になるだろう」(Tū fuī, ego eris.)という墓碑銘もあります。これも、「私」を「死者」と受け取ることで合点できます。「私はあなたのようにかつて現世を生きる人間であった。あなたもいずれ私のように死を迎えるだろう」と。

これらは、総じて「メメント・モリ」(死を忘れるな)のバリエーションととらえることができます。紹介した三つのラテン文は、それぞれたった四つの単語を組み合わせですが、読み手に生死の意味を問いかけ、今を力いっぱい生きるよう呼びかける、含蓄ある表現になっています。